第9幕
「ちょ!フルやりすぎだよ…」
今僕の前にはモンスターが足の踏み場もないほど転がっている
今は樹海に足を踏み入れて一週間目の朝となる、何故か僕の場合珍しいと言っていいほど他の冒険者と遭遇せず、会うのがモンスターばかりなのだがその度にフルが意気揚々と殲滅していくというね…可哀想になってきた。ほんと、なんか同情しちゃうよ。
なんでも後になって気づいたのだがどうやら僕とフルのどちらがモンスターを倒しても同じ量の経験値が手に入るらしくフルが殺戮を繰り返している最中に頭にレベルが上がったという情報が幾度となく入ってきた。それ自体は別に無害なので構わないのだけれどいきなりそのアナウンスがされるとビックリするんだよね。
でも不思議な光景だな
モンスターは倒されるとドロップ品だけを落としてその体は徐々に地面に飲み込まれて消えていくはずなのにそれ以上のペースでフルがモンスター達を倒すものだからなかなか目の前からモンスターの遺体がなくならないんだよ。
それにどうやらあの山の中にスライムやゴブリンなども含まれておりギルドで受けたクエストの依頼品もドロップされており僕は今それらを見つけて回収する作業に徹している。
でももういい、もういいからフル!止まってくれー!
「フル?あのさ、そろそろモンスター狩りはやめて僕の住んでいる街に戻ろうかと思うんだけれど」
いやだってクエストもこなしたし僕の職業の力も多少は分かってきたしそもそもこのあたりのモンスターが狩り尽くされてもう出てこないしと、もはやここにいる必要がない三拍子が綺麗に揃っている訳だし。
「というかそもそもフルはどこへ行ったんだ?」
周りを見渡しても先ほどまであっちこっちで虐殺を意気揚々と繰り返していたフルの姿が見えなくなっていた。あんまり遠くに行ってないといいけど…。
「我は後ろにいるぞ!」
フルが僕の後ろから突然声をかけてきた。嘘でしょ?さっきまで後ろには誰もいなかったのに…。
「ビックリしたじゃないか!どうして前からじゃなく後ろから現れたの!?嫌がらせ!?」
『まーまー怒るな。今我がそこでアイテムボックスを拾ってきてやったぞ!褒めろ!!』
「ちょっとフル!?今なんて言った!!?」
だってアイテムボックスといえば見た目は小さいショルダーバックのくせに、その外観に反していくらでもアイテムを入れることのできる伝説のアイテムだよ?それを拾ったというの?何故そんなものが落ちてんの!?まぁでもせっかくなら使わせてもらおう。
もう規格外もいいところだね、ほんと僕があの時フルを敵にまわしていたらどうなっていたところだろうか。
『まぁ我にかかれば朝飯前ということだ!それより人間の街に行くのか?』
「そうだよ!だってここにいる意味はもうないしお父さんも心配しているかもしれないしね!」
この後樹海を出るまでの間にもフルが殺戮を繰り返して僕がドロップ品を拾いアイテムボックスに入れるをしていたらアイテム総重量が100キロを超えていたのはまた別の話である