第6幕
「はぁはぁ、うまく撒くことができたみたいだ」
僕は近くにあった木に背中を預け荒くなった呼吸を整えた。
この樹海での逃走劇はとうとう今日で7日目を迎える。
まだ『奴』か近くにいるかもしれないのでしっかりと周りの警戒は怠らない
あれに見つかってしまったら僕は二十歳と8日でその生涯を終えてしまう。そんな悲しい展開なんて絶対にお断りだ。
だが僕の希望に反して『奴』が近づいてきている音がする。
「僕の冒険者ライフってたった8日で終了か…」
そう思ってしまうのも無理はない
エデルの食料は既に底を尽きかけており、なおかつ水もあとどんなに節約しても2日がいいところだ
もう一か八か戦ってみるしかないな。
覚悟を決めたエデルは目の前にまで迫ってきていた『奴』と相対する。
〜7日前〜
僕は新しくギルドから授かった力を試してみたくてたまらなかった
そのことをお父さんに話してみた結果、僕たちの住むこのビヤルドの街を北に10キロほど進んだ場所に北の樹海と呼ばれる低級モンスターが巣食うエリアがあり、なんでもそこならば極端に強すぎるモンスターはおらず僕の能力を試すのには最適な場所であるし、冒険者としての基礎知識も同時に学べるのではないかと提案してきたのだ。
理由としては年間を通して低級の冒険者がそこにはおり、彼らから武器の扱いだけでなく、野宿などの技術を見て奪うことも上級冒険者への第一歩なのだと言ってきた。
そうと決まれば善は急げだ。僕は昔お父さんが若いころに愛用していたお古の剣と盾、革の靴などの装備を慣れた手つきで着用していく
食料は保存食を7日分、水は念のために8日分用意した
「じゃあお父さん、行ってくるね!」
「エデル?まず無いとは思うが、自分より強いモンスターと遭遇したら逃げるんだぞ。
お母さんに似たのかお前は優しくなおかつ勇敢だ。だがしっかりと自分の命を大切にすることも冒険者としての心得だからな」
「うん!もちろんそんな危ない真似をしようとは思わないよ!それに一週間ほど行ってくるだけだから大丈夫だよ!」
そんなお父さんは僕の言葉を聞いてからか逞ましくなったと言いまたうっすら涙を浮かべている。
ほんとに泣き虫なんだからお父さんは
それから僕は一度冒険者ギルドへと足を運び、初めての僕でも倒せそうなモンスターの討伐依頼を見て2つ受注してみた。
その内容はスライムを倒し聖水というドロップアイテムを5つ持ってきてほしいというものとゴブリンの魔石を8つ集めてきてほしいというものだった
これらのモンスターは冒険者初心者が必ず通る第1関門ともいうべき最弱モンスター達だから大丈夫だろう。
「馬車を用意してもらうには少し費用がかさむから歩いて行こう!」
僕は意気揚々とギルドを後にしたのだった。
…
…
…
「ステータスオープン」
こうして北の樹海へ着いて早速僕は【職業付与】でもらったステータス閲覧を自分自身に向けてみたそうしてみると早速僕の頭に情報が流れ込んできた。
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
●HP 14/14 SP 8/8
●レベル 2
●スキル 無し
●装備 E鋼の剣
E鉄の盾
E革の靴
●????
なし
…えっとどう捉えればいいんだ?まずわからないのがレベルという項目だなんだろうこれ?どういう意味なのだろうか。
次にスキルなんて言葉があるけど、僕が生まれてから一度も聞いたことがない言葉だ。
何か戦闘に役立つものならいいのだけれど…
問題は一番下の項目だ。僕は確かにほぼ無謀な夢をたくさんの人に諦めろだの馬鹿にされたりはしてきたが僕自身のもつ能力にまで隠し事をされると今までポジティブ精神で生きてきたがそこそこ傷つくね。
まぁもうしかしたらこのステータス閲覧とやらの能力で気付いた時にちょくちょく確認してたらそのうち見えるようになるかもしれないし今はとりあえずパスだ。
さぁ、まずは僕の職業であるモンスターテイマーはモンスターを仕えさせて戦わせることのできるという特殊な職業と聞いたけど、その仕わせる為のモンスターを見つけないとね!
と考えていると目の前の茂みから1匹のモンスターが運良く姿を現した。
「ステータスオープン」
●名前 スライム
●HP 4/4 SP2/2
●レベル 1
●スキル なし
最弱モンスターとして知られるスライムだ。こいつは体全体を構成しているこのスライム自体が酸性なので、その粘液を飛ばすというのが主な攻撃方法だ。とは言っても動きも遅いし遠距離まで飛ばないからあまり怖い存在ではない。
というか、ステータス欄を見てみるとやはりモンスターの場合だと職業とか装備品とかの項目は無いんだね。
それに僕みたいに最後に????なんていう項目も無いし
スライム君、君は僕の能力に嫌われて無いみたいだよ?良かったね!!
なんか自分で言ってて悲しくなってきたぞ!
「モンスターをテイムさせるには死なせてしまったら意味はないよね?」
そこで僕はモンスターの心臓ともいうべき(モンスター核)と呼ばれる場所を避けてこのスライム相手に剣を刺してみた
すると明らかに勢いというべきものがなくなって鈍くなってきていた。モンスターを倒した後は本来その亡骸が命が尽きたその瞬間に少しずつ地面に飲み込まれていき、そこにはドラップ品が落ちるだけなのだが、今回僕はモンスターをテイムしたいので死なせるわけにはいかない。
「だけどモンスターをテイムするにはどうしたらいいのなか?」
試しに今目の前で弱っているスライムに触ってみると頭の中に情報がまた流れてきた
【目の前のスライムをテイムできますどうしますか YES/NO】
もちろんYESだ
そう頭で念じた瞬間、致命傷だったスライムの傷が一瞬で完治した
「成功したのかな?」
試しに僕のステータスを見てみると新しく
●テイムモンスター ステータス レベル1と出た
やった!
その後もその周辺でバトルをしてわかったことがいくつかあった
まず、テイムできるモンスターは現段階では1体だけだということ、そしてテイムしたモンスターは僕ら人の言う簡単な言葉なら理解して行動してくれることだ。
そしてそしてレベルというのもなんとなくですが理解しましたよ!
簡単に説明するとこれはその生物の個の強さを表しているらしく、これが上昇するに従って僕自身の体力を意味するHPの数値などが上昇したり、戦闘を有利にしてくれるスキルというものを取得することがあるらしいのだ。
そして何より驚かせされたのはテイムしたモンスターは親密になるに従ってどんどんと上位種に進化するという事だろう。何せあの後、日が暮れるまでスライムと信頼関係を築くために戦闘を続けた結果。
●名前 ヒールスライム
●HP 25/25 SP 15/20
●レベル6
●スキル プチヒール
もう持つべきものはやっぱパートナーだよ!だっていつの間に一段階進化して緑の体からピンク色になったと思ったらプチヒールとかいう回復スキル覚えてるしこれがまた便利で僕が他のスライムとの戦闘で油断して擦り傷を負った時、近づいて体から僕の傷口に向けて触手を伸ばしてきたかと思ったら僕が負っていたその傷口がみるみるうちに回復したんだもんビックリしたよ!
そしてあっという間に日が暮れたので簡易テントを手際よく設置し食事をとり他に特にすることが無かったのでスラミンと名づけたヒールスライムを枕にして寝ました
なんなもう頭のフィット感が最上級の枕みたいで一日で虜になったのは別の話だ
もう少し樹海編が続きます