私の半身
「桃花ちゃん、大好きだよ」
紫杏は目をうるうるとさせながら、私を見つめる。
「大好きなの」
そして、私へと唇を重ねる。
「桃花ちゃん……しよ……」
そして紫杏は、私に着せた洋服を勝手に脱がせる。
「はぁ……、早く終わらせてよね」
私は、冷めた声でそんな事を呟く。
紫杏は自分も服を脱いで、そして私と肌を重ねるのだった。
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私は古河桃花、9歳だ。
私には、夕凪紫杏という友達がいる。
この子は私のクラスメイトなのだが、相当な奇人だ。
まず第1に、紫杏はセックス中毒者だ。
誰かと肉体交渉をして人肌を感じていないと、精神の安定が保てないらしい。
まだ9歳なのに、私へと執拗に肉体交渉を迫ってくる。
そして第2に、紫杏は真性のレズだ。
男ではなく、同性である私の事を愛している。
そして第3に、紫杏は自分の事を愛していない人しか愛せない狂人なのだ。
例えば、私は紫杏の事を微塵も愛していない。
しかし紫杏にはそれがいいらしい。
紫杏の考えは私にはさっぱり分からない。
そんな訳で、紫杏は頭がおかしく、そんな紫杏の事を私は全然好きではない。
けれどそれでも、私は紫杏の友達をやっていて、そして紫杏へと自分の体を差し出している。
その理由は、紫杏が金持ちだからだ。
私がしばらく紫杏のおもちゃにされていると、やがて紫杏は体を動かすのをやめた。
どうやら満足出来たらしい。
「終わった?」
「うん、今日もありがと」
紫杏はそう言って、私へとまた服を着せ始める。
紫杏が私へと着せるのは、まるで人形に着せるようなヒラヒラとした服だ。
最初こんな服を着せられた時は戸惑ったが、毎日着せられるのでもう慣れてしまった。
「じゃあ私、ゲームするから」
そう言って私は立ち上がり、紫杏の部屋の中を少し移動する。
そして、山のようにゲームや漫画が並んでいる棚の前に付く。
「今日は何しようかな」
そして私は、紫杏の持つ宝の山を眺めながら、今日は何をして遊ぼうかと考える。
紫杏の家は金持ちなので、紫杏は何でも買って貰う事が出来る。
だから紫杏の家には、漫画やゲームが山のように沢山置いてある。
そして私は、紫杏におもちゃにされる代わりに、紫杏のもっているおもちゃを全て使わして貰う事が出来る。
だから私は、こんな頭のおかしなクラスメイトにわざわざ付き合っているのだ。
私は空想の世界に浸るのが好きだ。
現実には楽しい事はあまりないけれど、ゲームや漫画の中には楽しい事が幾らでもある。
だから私は、現実ではなく空想の世界を愛している。
そして紫杏は、そんな私の事を愛しているらしい。
何でも、空想の世界にしか心を預けていないのがいいんだとか。
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その後私は、テレビゲームをして遊んだ。
そしてしばらく経ったら、紫杏がまた私へと話しかけてきた。
「ねえ桃花ちゃん、その、またさせて欲しいんだけど……」
「さっきしたばっかじゃん……、またするの?」
「うん」
私は少しだけうんざりしながら、紫杏へと尋ねる。
「私とするのがそんなに楽しいの?」
「楽しいっていうか、安心するの。
私にとって桃花ちゃんは、自分の半身みたいなものだから」
「半身、ね……」
キリのいい所まで遊んだ後、私はテレビの音量だけ消して、一旦コントローラーを地面に置く。
そしてまた少しの間、めんどくさいなと思いながら、紫杏のおもちゃになっているのだった。
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そしてまたしばらくして、紫杏は私をおもちゃにする行為を終えた。
「ごめんね、遊んでたのに」
「いいよ。紫杏にとって私は半身みたいなものなんでしょ。
私は紫杏が何考えてるのかはよく分からないけど、その気持ちだけは少し分かるから」
私はまたテレビの音量を戻して、ゲームの続きをする。
「桃花ちゃんってゲームほんとに好きだよね」
「紫杏にとって私が半身なみたいに、私にとってはこれが半身だからね」
私にとって、ゲームや漫画とは自分の半身のようなものだ。
これがなければ、きっと生きていく事なんて出来ない。そのくらい私は空想の世界に浸るのが好きだ。
だから私は、紫杏の事なんて微塵も愛してはいないけれど、私にゲームや漫画を与えてくれる紫杏から離れる事は出来ない。
「桃花ちゃんって変わってるよね」
「紫杏に言われたくないんだけど……」
「えー、桃花ちゃんの方が変わってるよー」
紫杏は私を改めて見て、そして呟く。
「桃花ちゃん、大好きだよ」
私はそんな紫杏へと、ただ適当に返事をする。
「そだね」
そして私は、またゲームの続きをするのだった。