表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/57

第1章-8

遙とこよみの家は少しであるけど離れている。

とは言っても、歩いて10分もしないで着く距離だが。

そして、二人――むしろ、三人の帰路は途中まで一緒。

「それにしても、一年って早いね」

人ひとり分あるか無いかの距離を空けて、前を歩くこよみが上を見ながら囁いた。

今、二人が歩いているのがその場所である、並木道。

「あぁ」

色褪せ、本来の色を取り戻した桜の葉は、殆どが堕ち、枝が露出していた。

そして、立ち止まり遙もそれを見ながら答え―囁いた。

「僕さ、こよみに言うことがあるんだ」

「え?」

少し距離を離した位置で立ち止り、遙がいる後ろに振り向くこよみ。

「今日……気づいたことがあるんだ……」

「気づいた?何に?」

真顔の遙に、きょとん顔のこよみ。

正に、二人のそれは鏡に映した裏と表だった。

「今までさ、当たり前のように近くいたから、気づくのが遅かったんだね」

「近く?」

「あぁ」

二人の間に――そして、二人を取り囲むように冷えた風が吹いた。

「僕は、好きなんだ」

「え……」

突然の言葉に、何が起きたのか理解し難い表情をするこよみ。

遙だけが、その意味を知っていて、彼の顔色は赤く照れていた。

「好きなんだ」

「すき?」

未だに、何の事だか理解出来なくきょとん顔で繰り返す、こよみ。

そして、軽く深呼吸をし遙は自分の心の中にある本心本音を口にした。

「こよみのことが、好きなんだ!!」

それを聞き――そして、その言葉の意味を知ったこよみの顔は一瞬で赤く染まった。

突然の出来事で、それが信じられないのか――

「あ……」

遙が、呼び止めようとした時には、こよみの背中は小さくなっていた。

容易く言うなら、突然こよみが走り去ったと言うこと。

「……失敗したかな~」

残された遙を嘲笑うかのように、風が吹いた。

気持ち的に、一番寒かったような感じがした風だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ