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第2章-2

夢……。

僕は、懐かしい夢を見ていた。

これは……僕たちが中三になって初めてデートした時……

そして……あの悪夢が始まった時……

「ごめん。ごめん。待った?」

二人が待ち合わせ場所として決めた所に、肩で呼吸を整えながら遙がやってきた。

「んも~、少し遅いよ~、遙ちゃん」

「だから、謝ってるんだよ」

遙が時間に遅れたきた分だけ待たされたこよみは、そんな遙に頬を膨らませてふて腐れた。

「分かったって。昼奢るから」

こうなったこよみを慰めるには、この手段しかなかった。

「ホント?」

その言葉に目を輝かせながら、聞き返すこよみ。

「その代わり、マスバな」

「うん。私、あそこ好きだから大丈夫だよ」

マスバ――店名であり、省略しない場合は『マスター・バーガー』

全国に拡がるバーガーショップのチェーン店であり、その人気率更には売り上げが共に全国一。

その理由は、その店が自慢とする安さ・美味さ・早さの三大柱だ。

一個一個のボリュームが他店よりもあるのにも関わらず、損値段は他店よりも安く、学生のお財布に優しく設定されていた。

そして、店が自慢するだけあって、味も他店に劣れていなかった。

その味とは、ボリュームがあるのにも関わらず、食べることを飽きさせないものだった。

そして、出来の早さも他店よりも素早いものだ。

ボリュームが他店よりもあるが、それが出来るまでの早さが他店よりも優れていた。

更には、新商品の導入率が他店よりもずば抜けて高いのも、人気を保っている理由。

そして、年齢層に関係なく人気が高いのには、大きな理由があった。

それは、店内の清潔面。

各店内の全席数は他店よりも多い上に、その全てが禁煙席であること。

その為、学生や家族連れからの人気が高いのだ。

「んで、今日は何処行くんだ?」

「え~とね~」

さっきまでのふて腐れが嘘であったかのように、彼の右腕に自分の右腕を絡め、甘えた声で答えた。

「そこらへん。」

「……は?」

ある意味、恐ろしい答えを聞いた遙は苦笑を浮かべた。


「遙ちゃんありがとね~」

あれから一時間ぐらい経ち、二人は昼食をとるためにマスバにやってきた。

丁度十二時であり、更に休日でもあった為、店内はそれなりに混みあっていた。

そして、運良く対面タイプの二人席が空いていたのでそこに座ることになった。

「ま、また何か取りたいのがあったらとってあげるよ」

つい先程、この店の近くにあったゲームセンターのドールキャッチャーで遙が取った人形を嬉しそうに抱いているこよみ。

もとはと言えば、こよみがその人形が欲しいと遙に言ったのが原因なのだが――

遙は、そういったゲームが得意であった為、一回でとったのだ。

「うん。」

「じゃ、早めに食べて、次の場所に行くか?」


「う~んとね、次は~……」

昼食を取り終え、次の場所を決めあう二人。

勿論、こよみは前と同じように遙の右腕に自分の右腕を絡めていた。

「もしかして……」

「ん?どうしたの、遙ちゃん?」

「なんも決めてなかったのか?」

遙の問い掛けに、こよみは無邪気そうな笑みを浮かべ誤魔化した。

が、二人はもともと幼馴染みたいなものであった為、遙からしてみれば無力とも言えるものだった。

「はぁ~」

改めて知った真実に、遙は何とも言えがたい思いでため息を吐いた。

「じゃ~、ショッピング。」

「え?……って、こよみ引っ張るな~」

こよみに引っ張れる格好で、二人は近くのデパートの中に入っていった。


「ね~ね~、遙ちゃん」

「ん?」

真っ先に、女性服売り場に連れてこられ、遙は近くのベンチに座り、こよみは自分の服を見つけに行った。

と、思いきや数分後には一枚の上着を持ったこよみが戻ってきた。

「これ、どうかな?」

遙の前で、その服を自分の上半身に当てながら訊いた。

「どうって……」

もともと、服のファッションセンスが微妙に劣れている遙には難問に近い質問だった。

「かわいい?似合う?」

「かわいいって……」

こよみが持ってきた服の絵柄を見据えた。

そこに描かれていたのは、今女子の間で大人気の『キルグマ』。

本体は、普通の熊なのだが、そのオプションが何とも言い難いものだった。

右手に血みどろの鉈を持ち、左手には右手の鉈とは関連性が無視され小魚が掛かっている釣竿を持っている。

ほとんどの男性陣からしてみれば、これのどこがかわいいのか理解解読ともに不能なものだ。

「『キルグマ』ちゃんだよ。かわいいよね」

「か……かわいいのか……」

そして、遙もそれだった。

「うん。どうかな?遙ちゃんも着てみる?」

「非常に着たくありません」

こよみの誘いに即答する遙。

「ま~……こよみが好きならいいんじゃないのか?」

「ホント?」

「あぁ」

「うん。買ってくるよ」

それを嬉しそうに抱きながら、こよみはレジに向かって行った。

「全く……あれのどこが可愛いのか……」

残された遙は、女性の趣向に困惑気味で呟いた。

「!!」

だが――その直後、遙に異変が起きた。

突然、目の前がフラッシュしたかと思いきや、一気に歪みだし――

右胸のあたりが内側から破裂しそうな激痛が沸きあがってきた。

「くぅ……ぅ……ぁ……」

遙は、右胸を抑えながら、のろのろとトイレに向かって歩き出した。

丁度運良く、今いる階にトイレが設けられていた為――

そして、その位置が自分のすぐ近くに会った為――

全身から噴き出す気持ち悪い冷や汗を感じながら――

「待った~?……あれ?」

服を買い終えたこよみが、さっきまで遙がいた場所に来たのは、彼がトイレの中に消えていった直後のことであった。

「遙ちゃん……どこにいったのかな?」

何もしらないこよみは、心配そうな顔つきでその場所に座った。

さっきまで遙が座っていた場所に――

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