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夢夢夢

人物紹介



長谷川珠【ハセガワ タマキ】

通称タマキ。黒縁眼鏡。眼鏡を外すと左目が青い。深海のようなディープブルーである。

小さい頃から男勝りで口うるさい。好奇心旺盛ですぐに迷子になる。時々頑張り過ぎて空回る。疑心暗鬼な部分があるが来るもの拒まずのスタンスを取っているので頼りにする人が多い。アキと海崎を溺愛している。まな板。

『君は運命の出逢いってやつを信じないのかい?』




はっきりしない意識の夢。

明晰夢にも似たもので、タマキはこの夢を見る時必ず夢だと理解する事が出来たし、他の夢とは異なって自由自在に動き回る事が出来た。いつもと違うのは、今自分が夢の中でどこに居るのかはっきりと分かるところだ。

夢の主、タマキは視界を上げる。


真夜中の美術室。

コトヒコ達と一緒に過ごした中学校や小学校ではない。高校の美術室だ。


ありとあらゆる"青"色の絵の具がぶち撒けられていて、石膏からカンバスから、黒板から柱に至るまで、全てが青い。深海に沈んだような世界だ。

自分の手を見てみる。身体までは青く染まってはいないようだ。安心してタマキは前を見る。

教卓の上に少年が座っていた。

『君と話がしたい』

「私と?」

少年は楽しそうに笑っていた。

タマキは少年のことを揶揄ったように鼻で笑う。自分も机の上に腰掛けた。

「バカ言わないで。これは私の"夢"なのよ。私が話さないって思えばきみは話し掛けて来ないし、私が絵の具の色を変えようと思えば変えられるの。」

『じゃあどうして僕は、君と話がしたいなんて言い出したんだろうね?』

少年は足をばたつかせる。

顔立ちが中性的だが、その中に少年が持つ意地悪さが見えていた。

「どうだろうね」

タマキは不機嫌そうに目線を逸らした。

『"夢"ってものはねーーーーーー無意識の世界なんだ。君が無意識に作り出す頭の中の世界。現実ではないし、誰かが見せてるものでもない。君の言う通り、君が自覚さえしてしまえば君の思い通りになる。

ただ君はそれ程無意識を操れるかい?』



「さあね。話を戻すけど、少なくともさっきのパツギンが運命の出逢いだなんて到底思えない。」



「私の運命の出逢いは、海崎さんを超える人に出逢った時と、きみを■■ことが出来る人に出会った時だよ」


『はは。』


向かい側にいる少年が笑う。

何処までも青く、見つめる度に深海へ引き摺り込まれてしまう錯覚のある瞳で、タマキを見つめている。

タマキは眼鏡をかけていなかった。けれども彼女の瞳は両方とも黒い。


『君も君で、僕に依存してるじゃないか』



「悪い?」


『いいや』




『ただ僕は怖い。何時か君と僕が一つになってしまう時が。僕を失って君になる時が。君を失って、僕になる時が。』













一中の体育館倉庫で眠り込んだタマキを目の前に青年は頭を抱えた。

自分を助けに来てくれたーーーーーーのは分かった。だが何の目的の為?彼女は一体何者?それだけが分からない。

逆に言えば、重要な二つのことが分からないでいた。

「俺を助けてくれた辺り、敵ではない。と思うけど……味方とも断定出来ない。」

眠りこける彼女の頬に触れる。

特に何かを感じることもなく、追っ手の気配も感じなかった。今の所、タマキは青年にとって無害だ。

「(とにも、かくにも。彼女を家まで運んであげよう。)」

青年はポケットからーーーーーー先ほど兎相手に出そうとしたものを取り出す。


茶色い紐に、瑠璃色に光を放つ鏃の形をした石が括り付けられた振り子。

右手で振り子を持つと、淡い光を放ってゆっくりと動き始める。

「『ペンデュラム』」

「彼女を元あるべき場所へ」

手を離す。『ペンデュラム』は、ひとりでにふわりと浮かび体育館倉庫の出口を指し示していた。

青年はタマキを持ち上げると、『ペンデュラム』の後に続いた。

「(彼女、強いんだろうな。)」

青年はタマキの温もりを確かめる。抱き上げている身体を胸に押し当て寝顔を覗き込んだ。

相変わらず鼻提灯が浮かんでいる。

「(今は、今だけでも彼女を守ろう。)」

タマキの顔から目を離して、空を見上げる。

目にも余る大きな月が、空に浮かんで不気味に光を放っていた。




学区を抜けて駅前近くの路地裏に入ると、『ペンデュラム』は褐色の壁にぶつかった。

古ぼけたテナントビルで、目の前には漆喰のドアがある。装飾が磨りガラスであるせいで中の様子が伺えない。

「(ここが家?)」

気になって、ビルを見回してみる。

ドア近くの壁には古びた看板、シルクハットの形をした看板がぶら下がっていて、英語で店名ーーーーーーそっくりそのまま、『シルクハット』と書かれていた。

看板のすぐ下にあるコルクボードには町内会のお知らせや犯罪防止を促すチラシ、消防隊の募集などが貼られているが、どれもこれも色褪せていた。

更に気に掛かったのは、漆喰のドアの真ん中に貼られた紙。

『廃業しました』

マジックで適当に書かれた文字が消えかかっている。日付けは十年前の四月だった。

「(十年も前に廃業してるのに、何で残ってるんだ?)」

屈んでろくに前も見ずにドアを眺めて青年はどうして『ペンデュラム』がこの店を示したのか考えていたからなのか。

勢いよく漆喰のドアが開いて、全身に強い痛みが走った。

「あっ!」

またしても彼はコンクリートに眠ることになった。地面に身体が吸い込まれるように倒れていくのが分かる。

「どうしたのコトヒコ〜?」

消えかかる意識の中、柔らかな女の子の声が聞こえてきて、次に聞こえた声を最後に、青年は意識を手放した。

「まずい、またドアで先制攻撃をしちまった。よりによってタマキの運命の人を。」









月の光が届かない暗い夜。

光は無く、目の前に細く頼りない道が続いている。

『銀月なんて』

『銀月なんて嫌い』


自分は道を進む。

振り返ってはいけない。追っ手はすぐ近くにまで来ている。

振り返った時、自分の全てが暗闇に飲み込まれてしまうから。


『銀月だけは私を理解してくれると思った』

『でも銀月も姉様を選ぶのね』


聞こえない。聞こえない。

自分に言い聞かせて進む。

辺りから兎が藪を走り回る音が聞こえてきて、耳を塞ぐ。


『聞こえないとでも思ったの?』


耳を塞ぐと、目の前に『それ』は現れる。

兎と同じ赤い目で見つめてくる。


『銀月なんて嫌い』

『銀月も私を分かってくれないなら』



目を瞑る。

何も見えない何も聞こえない何も分からない。



目の前にいるのは自分の恐怖。



身体が大きくぐらついた。

自分という『もの』があるのかすらも分からなくなる。


何も。

何もーーーーーー分からない。分かりたくなど、ない。



『銀月なんて消えちゃえ!』







次の瞬間、【銀月】は真っ暗闇へと突き落とされていた。




時間すらもわからない、深い深い夜の闇へ。









次回から順繰りに登場人物紹介入れてきます。


駄文すぎてクソワロですが、

読んでくださると幸いです。頑張ります!

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