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夢が代  作者: 月のこと蝶
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ハクチュウ ノ アクマ


二章 ハクチュウ ノ アクマ



外からの悲鳴で青年、ルーカスは部屋を出て外の様子をうかがう。どうやらここは、小さな村のようだ。すこし遅れてシェリも出てきた。するとそこには、血を流して倒れている女性と、赤黒いなにかがあった。ルーカスとシェリは女性に駆け寄る。周りを見渡すとあちこちに血が飛び散っており、悲鳴を聞いた人々がすこしだけ集まってきていた。

「…ねぇ、ルカ君…これって…」

シェリが泣きそうな、震える声でルーカスを呼ぶ。ルーカスはシェリの方を向く。

そこにあったのは、両腕両足を捥がれ、目と舌を抜かれた女性と、肉の塊だった。

''まるでこの女性の両手足を丸めたような''

そんな嫌な感じのするものだった。ルーカスは女性の脈を確かめた。もしかしたら、まだ生きているかもしれない、そんな淡い期待をして。

(…生きている、いや、生かされている、という方が正しいだろう…)

ルーカスはほんの少しの怒りと、とめどない吐き気を感じた。

「この人、まだ生きてる…!は、早くお医者さんを!お医者を呼んできて!!」

シェリはそう叫ぶが、既に手遅れであとはゆくっりと迫り来る死に恐怖するしかないと、誰もが理解している。シェリも例外ではない。

「もういい!私が、私が呼んでくる!!」

そう言ってシェリは駆け出した。ルーカスはなにがこんなことをしたのか、を考えていた。しかし、ルーカスは重要なことに、今更気付いた。

(この女性の悲鳴を聞いてから、まだそんなに時間はたっていない…しかし、こんなことをしたやつはまだ見てない。つまり、まだ近くにいる…!)

すると、シェリが走って行った方向から爆発音が聞こえた。ルーカスはすぐにその方向へ向かって走り出した…




シェリは、得体の知れない''なにか''に襲われていた。致命傷は受けていないものの、徐々に追い詰められているのがわかる。

「…くっ!強い…私だけじゃキツイ…でも、やらなきゃ!!もう、あんなことをさせない!!!」

シェリは意識を手にもつ''それ''へと集中させる。するとそれは光をあげ小さな横笛のような形になった。

「はぁぁ…《リトルマーメイド》!!!!!」

シェリはそう叫ぶと手に持った''それ''に思いっきり息を吹き込んだ。

耳を突き刺すような音 音 音

そして、その音が人魚の形をして、''なにか''に迫る。シェリは確信していた。やつらはなにかわからない。しかし、シェリは自分の''全力の''魔法はこの''なにか''を切り刻み、必ず絶命させる、と。そして、人魚の形をした音がその''なにか''に命中した。しかし、シェリは目を疑った。

「…嘘…どうして…」

その''なにか''はシェリの魔法を正面から受けた''ように見えた''が、人魚の形をした音はそのままその''なにか''を''通り抜け''て後ろにあった木に当たり、爆発音とともにその木をなぎ倒した。

「なんで…そんな…」

魔法は多大な精神力を消費する。シェリはそこそこの魔法使いだが、それでも1日に使える魔法はせいぜい5回。しかしシェリは非常に多くの精神力を1回の魔法につぎ込んだ。威力は絶大、しかしその代償としてしばらく魔法が使えない。そして、身体に多大な疲労感が残る。使い所によっては非常に強力、しかし、一歩間違えれば一気に形勢を逆転されかねない。そして、シェリは恐怖のあまり、その恐怖を遠ざけようと、選択を間違えた。このままだと、シェリはあの女性、そして母のようになってしまう。シェリは魔法を使った疲労感により、足に力が入らずその場にへたり込んでしまう。''なにか''は徐々に迫る。

(に、逃げなきゃ…まだ、死ねない、絶対に!)

しかし、シェリの思いとは裏腹に身体は動かない。ついに''なにか''はシェリの目の前にきた。恐怖 恐怖 恐怖、全ての感情が恐怖という色に塗り潰されていく。そして、''なにか''がシェリの身体を持ち上げる。

(お母さん…ごめんね、お母さんの想い、叶えられなかった…)

死を受け入れたシェリ。そして''なにか''はシェリの腕に力を入れた。あの女性のように。

目が覚めると、自分の部屋、ルーカスが寝ていた部屋だ。どうやら気を失ってしたらしい。そばにはルーカスがいた。

「ルカ君…?ど、どうして私はここに…?」

ルーカスはふぅ、と一息ついてから話出した。

「走って行って、そしたらシェリさんが捕まってて、それで無我夢中で、俺も気付いたらやつらはいなかった。」

ルーカスはシェリと目を合わさないように話す。

(そういえば、初めてルカ君の声聞いたな…)

「そっか、ありがとうルカ君。」

そして、シェリはすこし笑いながら

「ルカ君、声意外とかわいいんだねっ」

ルーカスは照れながらうつむいた。



そして、数日が経った。

ルーカスはシェリにたくさんのことを聞いた。ここは王国の領内で、領内の半分は森で、半分は沼地できていること。その森の奥には大きな城があって、幻獣が住んでいるという伝説があること。そして、沼地の奥には悪魔たちの住む魔王の城があるということ。そして、その悪魔たちに対抗するために、剣と魔法をつかうのだ、ということも教えてもらった。そうして、のんびり過ごしていたルーカスに、突然来客がきた。

「すみません、王国衛兵です。ルーカスさんはいらっしゃいますか?」



続く


これからが物語のスタートとなります。

ドキドキワクワクの王国です。

お楽しみにっ

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