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領主の思惑

私は、

ハンケルに公開基金の件を任せ、

領主に相談しに行くことにした。


「今日は何の用だね」

領主は尋ねた。


「今日は折り入ってご相談があります」

と私は答えた。


「コストがかからない話なら聞こう」

領主は笑った。


「コストがかかるかどうかはわかりませんが、馬屋と小規模飲食店が集まる地域を作ってはどうかという提案です」

と私は答えた。


「馬屋と小規模飲食店が集まる地域?なんでそんなモノを作る」

領主は尋ねた。


「今回売上の煽りを受けたのは、馬屋と小規模の飲食店です」

と私は答えた。


「それで」

領主は尋ねた。


「小規模の飲食店の売上が下がったのは、馬関係者の来店が減ったからです。馬屋の売上が減ったのは、道の流れがスムーズになったからです」

と私は答えた。


「なるほど。それは道理がたっている。それでなぜ集まる地域を作る」

領主は尋ねた。


「集まる地域ができれば、馬車が集まります。すると商売に活気が出ます。彼らの売上も上がるでしょう」

と私は答えた。


「競争が激しくなって、儲からなくなるのではないか?」

領主は尋ねた。


「たしかに、儲からなくなる店もあるかもしれません。しかし馬車の利便性が高くなれば、この街への馬車の流入量も増え、効率的に稼げるようになるでしょう」

と私は答えた。


「なるほど……、

税収が増えるか」

領主は呟いた。


「左様にございます」

と私は答えた。


「問題は場所だな。どう考えている」

領主は尋ねた。


「領主様がお持ちで、活用にお困りの土地、もしくは建物はございませんか?」

と私は尋ねた。


「あぁ、そうか……。なるほどな。それならある。この南の地区に、倉庫街があるのだが、ここが空きが多くて困っておる」

領主は答えた。


「倉庫街ですか……、

それであれば、馬車の流通拠点にすれば、倉庫街として賃料も取れますし、領主様も潤います」

と私は答えた。


「なるほどな。

それは妙案だ。

それでどうする?」

領主は尋ねた。


「そうですね。どうしましょうか。

ところで領主様は乗り気なのですか」

と私は尋ねた。


「そりゃそうだ。ちょっと待ってくれ。お茶を用意させよう」

領主は言った。


領主は侍女にお茶を持ってこさせる。

ここに来てお茶を出してもらえたのは、初めてだ。


「私も、このような施策は初めてゆえ、何を決めたらいいか、

見当がつきません」

と私は答えた。


「そうだな。私もだ。ちょっと待て。セバスはいるか」

領主は侍女に声をかける。


しばらくして、

身なりの整った紳士が現れた。


「これは執事のセバスだ。彼も交えて話そう」

領主は言った。


私とセバスは握手をする。


「それで旦那様。どのような件で」

とセバスは尋ねた。


「説明してやってくれ」

領主は言った。


私はいままでの経緯を簡潔に説明する。


「なるほど……、何を決めればいいかということですね」

とセバスは考え込む。


沈黙が流れる。

領主も私も何も考えていないのが、

ハッキリとわかった。

完全に執事頼りだ。


「そうですね。まず名前などどうでしょうか?」

とセバスは答えた。


「名前は考えているのか」

領主は尋ねた。


「滅相もございません。

こんなに話が進むとも思っていませんでしたから」

と私は頭をかいた。


「旦那様の名前を冠してはどうでしょうか」

とセバスは尋ねた。


「それはムリだ。嫌だ」

領主は言った。


「それでは馬場とかはどうですか?」

と私は尋ねた。


「あまりにもありきたりすぎませんか」

とセバスは答えた。


「たしかにありきたりだ」

領主は言った。


「そうですね。領主様が好きな花の名前とかは、どうですか?」

と私は尋ねた。


「旦那様はスイートピーがお好きですから、スイートピーガーデンとか良いかもしれませんね」

とセバスは顎をかいた。


「スイートピーガーデンとか、恥ずかしすぎるからやめろ」

領主は言った。


「領主様はあまり触れられたくないのですか?」

と私は尋ねた。


「旦那様は、シャイですから」

とセバスは答えた。


「まぁな。そういうのが苦手なんだ」

領主は恥ずかしそうに目をそらした。


「では馬市場とかはどうですか?」

と私は尋ねた。


「馬を売っていると思われるのでは?」

とセバスは答えた。


「ミステリアスダークホース」

領主は呟いた。


「まったく通じません」

と私は答えた。


「旦那様はカッコいい名前が好きなのです」

とセバスは答えた。


「ブルーダークホース」

領主は呟いた。


「意味がわかりません」

と私は答えた。


「旦那様はダークホースという響きが好きなのです」

とセバスは答えた。


「そうだ。ダークホース的ななにかは欲しい」

領主は言った。


「では……、その場のエンブレムをダークホースにすればどうでしょうか?」

と私は尋ねた。


「それ。それにしよう。それ決定だ」

領主は言った。



「人馬休宿とかどうでしょうか」

とセバスは尋ねた。


「それいいな。それにしよう」

領主は言った。


「わかりました。それにしましょう」

と私は答えた。


「では次は、倉庫街のどこを人馬休宿にするかですが……」

とセバスは尋ねた。


「どうすれば効果的だ?」

領主は言った。


「そうですね。中央部にするか。もしくは入口にするかですね」

と私は答えた。


「入口辺りは借り手がすでにいますから、中央部が良いでしょう」

とセバスは答えた。


「じゃあ、そうしてくれ」

領主は言った。


「さて……、次は何を決めましょう」

とセバスは呟いた。


「賃料をどうするかだな」

領主は答えた。


「中央部より安く、しかし倉庫よりは高くがよろしいかと」

と私は答えた。


「旦那様。それは理にかなっております」

とセバスは答えた。


「じゃあ。セバスが調べて賃料を決めてくれ」

領主は言った。


「なにか費用とかはかかるものですか?」

と私は尋ねた。


「そうですね。馬屋でも、飲食でも、設備をそのまま持っていければ、移動の費用くらいでしょうね」

とセバスは答えた。


「そうだな。移動の費用は、基金から出すし、うちは腹が痛まんし、逆に倉庫街の賃料収入は上がる」

領主は笑った。


「旦那様、いい部下をお持ちになりましたな」

とセバスはうなづいた。


いつの時代も、上司の利益と会社の利益を真っ先に考える部下は好かれる。

そういうものだと思った。



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