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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第22章|個の回収
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(2) 由良の静かな日常

朝の光が差し込む部屋。

窓の外で、小鳥が鳴いている。


由良は机に向かい、書物を開く。

古い頁の匂いが、わずかに立つ。


記されているのは、嫉妬の術式。

絡まりやすい感情の構造。

ほどく順序。


指先は落ち着いている。

迷いはない。


必要だから、調べる。

今度は、間違えないために。


机の端には、便箋が一枚。

まだ封をしていない。


短い言葉が、整った文字で並んでいる。

何度も書き直した跡はない。


由良は筆を置く。


窓から差し込む光が、白い紙を照らす。


「……今度こそ」


声には出さない。


幸せは、願うものではないと知っている。

作るものだ。


本を閉じる音が、静かに響く。


遠くで誰かが笑っている。

その声に、由良の視線がわずかに柔らぐ。


まだ届いていない想いではない。


すでに、ここにある。


ただ、今度は失わないだけだ。


由良は便箋を折る。

封は、まだしない。



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