表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/188

(2)小さな犠牲

誰の名前も、顔も、語られない。

だけど、失われたものは確かにそこにある。


大地は静かに呼吸を取り戻したかのように見える。

だが、海は割れ、山は噴火跡を残し、焦げた森の跡は残っている。


かつて流れた溶岩や土砂の跡が、まだ冷え地面に刻まれている。


街の建物も、屋根が落ち、壁はひび割れ、道には壊れた鎧や兵器の一片が散乱したまま放置されていた。


風が静かに吹き抜け、光が揺れる影を作る。

空は高く、澄み、どこまでも静かだ。


力を失った者。

役目を終た存在。


記憶の片隅だけを残して

もう二度と戻らない誰かを弔う人々。


森の奥、倒れた木の陰にひっそりと佇む小動物たち。


家族の顔を思い出せない老人。

小さな村で、子供の手から落ちたおもちゃ。

誰も大声で泣かない。

誰も助けを呼ばない。

それでも、欠けたものがあることを、世界はそっと見せていた。


風は冷たくも優しく、焦げ跡や瓦礫に触れて、時間の痕跡をなぞる


一方で、瓦礫を片付け、倒れた家を修復し、再び歩き始める者たちもいる。

手を取り合い、光の方向を見つめる人々。


小さな希望はまだ、ゆっくりと息を吹き返していた。



空は高く、風は静かに吹き抜ける。

光が差し込み、揺れる影がひとつひとつの空白を照らす。



世界は守られた。

でも完全ではない。


そして、その隙間に、静かに息づく何かがあることを、誰も気づかない。


光が揺れる影は、まるで世界の呼吸そのもののように、ひっそりと動いていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ