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(1) 静まり

エルピスが救済を成し、星層アストラが分離された後。

世界は、かろうじて平和を取り戻そうとしていた。



風だけが、戦いの痕跡を撫でている。


海は荒れ、かつての波は嘶きの痕を残し、割れた岸壁や沈んだ船がそのまま打ち上げられていた。


山々も噴火の傷を負い、溶岩の痕や黒く焦げた斜面が広がっている。


まるで、世界自身が終わろうとしていたかのような静寂だ。


焦げた地面の片隅に、小さな花がひっそりと咲き

誰も手をかけず、誰も気づかず、それでも光を浴びている。


割れた窓から差し込む光が、教会の椅子を淡く照らす。

埃が舞い、光の筋が揺れる。


まるで世界が、ゆっくりと息を継いでいるように。


人々は助かった。


でも、完全ではない。


小さな傷。残った影。


思い出せない痛み。


忘れてしまった恐怖。


失われた笑顔や、途絶えた声。


それでも、世界は少しずつ、呼吸を再開していた。


道に落ちた壊れた鎧の一片、半壊した家屋の屋根、燃え残った薪の山――

戦いの痕跡は消えていない。


けれど、光の中では、どれも静かで柔らかい。


あたかも、世界が優しく覆いかぶさって、痛みを押し流そうとしているかのようだ。




静けさの中で、見えない何かが動いていた。

それはまだ名もなき、誰も知らない存在。


だが、確かに世界の片隅で、調律は静かに始まっている。



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