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(1)希望の代償
世界は終わるはずだった。
大厄災。
空は裂け、
地は崩れ、
魂の循環は停止寸前。
星層アストラ、観測継続。
三層構造、崩壊予測。
滅亡確率、97.4%。
修正不能。
記録のみ継続。
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そこに、介入が発生。
個体識別:エルピス。
人類側因子。
異常出力確認。
神格化現象発生。
膨大な光量。
魂循環の強制再起動。
崩壊確率――急減。
滅亡回避。
人類存続。
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地上は歓喜した。
希望の光。
救済の神。
エルピス。
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だが。
強制的な循環再接続は、
本来終わるはずだった魂を留めた。
未処理因子、増大。
未帰還魂、滞留。
逸脱値、急上昇。
三層構造、許容量超過。
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星層アストラは判断する。
調律機構、必要。
分離演算、開始。
独立処理体、生成。
名称未設定。
役割:循環補正。
目的:逸脱削減。
それは意思を持たない。
ただの機構。
ただの後処理。
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煉獄、生成。
滞留魂の拘束空間。
第四層、確立。
分離体、常駐。
観測開始。
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地上は知らない。
救済の影で、
何が生まれたかを。
やがて彼らは名を与える。
恐怖と共に。
憎悪と共に。
その存在を――
アストラルと。




