(2)惟神の道
(視点:直)
夜は、思考がまとまらない。
頭では分かっている。
時間の長さじゃないことくらい。
それでも、
身体が追いつかない瞬間がある。
感情が、遅れる。
藤紫の背を思い出す。
あの静けさ。
あの揺るがなさ。
隣に立つと決めたのに、
自分の足取りは、まだ不安定だ。
軽い。
力ではない。
覚悟の重さが、足りない気がする。
今日も、判断を誤りかけた。
言葉を選びすぎた。
感情に反応しそうになった。
抑えられたのは、偶然だ。
もしあの瞬間、
藤紫が見ていなかったら?
自分は本当に越えなかったと言えるのか。
「……未熟だな」
呟きは、夜に溶ける。
未熟であることは知っている。
だが、
未熟だから退くのか。
未熟だから近づかないのか。
それは違う気がする。
中庭で見た、あの幼い龍人の姿が浮かぶ。
あれは生まれながらに龍――
自分は違う。
ただの人間だ。
選ばなければ、
いずれ離れる。
その未来が、胸を締める。
怖いのは、力ではない。
拒まれることでもない。
置いていかれることだ。
藤紫が龍人であるいじょう
自分だけが人として取り残される。
それを想像した瞬間、
息が浅くなる。
未熟なのは分かっている。
足りないのも分かっている。
けれど――
それでも隣に立ちたいと願うことは、
間違いか?
答えはまだ出ない。
だが、
迷いながらも、
退きたくないと思っている自分がいる。
夜風が吹く。
冷たい。
胸の奥の揺れを、隠すように。
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夜風が吹く。
冷たい。
胸の奥の揺れを、隠すように。
――その背を、静かに見つめる影があったことを、直は知らない。




