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(1)惟神の道
(視点:直)
朝の神殿は、音が少ない。
ここに立てる者は限られている。
それを、直は知っている。
中庭に、小さな気配がある。
生まれながらに龍人である子。
未熟な翼が、光を受けて淡く揺れる。
数は多くない。
増えるものでもない。
この地に在る命は、
すべてが重い。
回廊の先に、藤紫がいた。
朝日を背に、静かに空を見ている。
以前なら、
自分が立つ場所を探した。
今は探さない。
自然に足が動く。
隣へ。
藤紫は振り返らない。
拒まれもしない。
それだけで、十分だった。
この場に立てるのは、
眷属だけではない。
まだ名を持たぬ者もいる。
力の形が定まらぬ者もいる。
だが――
ここに立つかどうかは、
選ぶことだ。
直は何も言わない。
誓いも立てない。
ただ、退かない。
風が抜ける。
藤紫が歩き出す。
直も並ぶ。
一歩遅れず、
一歩越えず。
並んで。
道は示されない。
けれど、
足はもう迷っていなかった。




