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(2) 双子座を追い、地上へ
星図の中で、双子座の位置が空白になっている。
かつて、ふたつあった光の片方は、すでに落ちた。
もう片方も、空に留まってはいない。
煉獄へ向かった弟。
それを追い、後を選んだ兄。
リーブラは、それを測らなかった。
測る資格がないと、知っていたからだ。
星が落ちる理由を、秤で裁くことはできない。
まして、そこに感情が混じるなら。
リーブラは空を見上げた。
星々はまだそこにある。
だが、空から消えた星の異変の余韻が、確かに残っている。
星が――
重さを持ち始めている。
それは物理の話ではない。
意味の話だ。
星が「遠い象徴」ではいられなくなり、
世界に直接、影響を与え始めている。
このままでは、
次に傾くのは、地上だ。
「……追うしかないか」
誰に向けた言葉でもなかった。
命令でも、誓いでもない。
ただの、選択。
天秤座は、自ら秤を置き、
星の座を離れた。
それは、禁忌だった。
役目を放棄した星は、もはや星ではない。
それでもリーブラは、双子座の軌跡を辿るように、地上へと身を投げた。




