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(4)手を引く側
(視点:紫苑)
直はまた少し背が伸びた
人の子にしては少し、出来すぎている様に思えた。
人の子にかけるように
褒めてやることは出来る。
だが、そうはしなかった。
苗木や植物が、余計な手を加えられずとも伸びていくように、
直は、ただ静かに、
すくすくと育っているから。
まだ、もう少し、見守ろう
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(視点:藤紫/直)
直はいつの間にか手を引かなくても平気になった。
支えがなくても自立歩行して
背も高くなり、歩幅を合わせて歩いてくれている。だが藤紫はまだそのことに気がついていなかった。
いつものように、手を繋ぎ散歩道を行く
外郭から見える虹に気を取られ、つまづいた藤紫は、
転ぶことはなかった。
ほんの一瞬、身体が前に傾いただけ。
——気がつけば、直の手が、
いつの間にか藤紫の手を引く形になっていた。
「あ……」
藤紫は、小さく声を漏らした。
だが、それが何に対するものだったのか、
自分でもよく分からなかった。
直は何も言わない。
ただ、歩幅を少しだけ落として、
いつも通り隣を歩いている。
手を引く力は、優しくて、変わらない。
——変わってしまったのは、
どちらだったのか。




