表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第13章|変わっていくものと、変わらない夜
61/193

(6)見守るという選択 2

(視点:直)


直は、他の子達と比べると成長が早い事に気がついていた。

気のせいじゃない。

お姉ちゃんと、自分の成長速度が違う。


お姉ちゃんの手は、いつもと変わらず優しい。

小さくて、あたたかい手。


初めて出会った頃から、

その手は、直を包む大きさのままだった。


直の手は、少しずつ変わっていく。

指が伸びて、力がついて、

同じように重ねても、どこかはみ出すようになった。


それでも、お姉ちゃんは気づかないふりをする。

気づいていないのか、

気づいていて、言わないだけなのか。


直には、わからない。


夜、並んで歩く回廊で、

足音の間隔が、ほんの少しだけずれていることに気づく。


前よりも、

自分の歩幅の方が、大きい。


振り返れば、

お姉ちゃんはいつも通り、同じ速度で歩いている。

急ぐことも、遅れることもなく。


その背中は、

変わらない。


直は、歩調を合わせる。

無意識に、少しだけ足を小さくする。


追い越さないように。

隣に、並んでいられるように。


――この時間が、

まだ続くように。


直は、何も言わなかった。

言葉にしてしまえば、

この静かな違いが、確かなものになってしまう気がしたから。


変わっていくのは、自分だけでいい。

そう思った。


お姉ちゃんの手が、

このまま変わらず、そこにあるなら。


―――――――――――――――――――

(視点:紫苑)


回廊の先、柱の影に、誰かが立っている。


紫苑だった。


直は、ふと視線を感じて顔を上げる。

目が合う、ほんの一瞬。


紫苑は、何も言わない。

呼び止めもしない。

ただ、静かに見ている。


その目は、

直の背丈も、歩幅も、

そして――隣を歩く藤紫の変わらなさも、

すべてを映していた。


直は、なぜか胸が少しだけ苦しくなって、

それでも、目を逸らさなかった。


紫苑は、わずかに微笑む。

それは、慰めでも、問いかけでもない。


「知っている」というだけの、表情。


直は、その意味を理解できないまま、

視線を外す。


再び歩き出すと、

藤紫はいつも通り、直の隣にいる。


手が、重なる。

小さな手と、少し大きくなった手。


紫苑は、二人の背中を見送る。

並んで歩く時間が、

もう同じ速さでは流れていないことを、

誰よりも早く知りながら。


それでも、止めない。


見守るという選択を、

最初から、迷いなく選んでいた。


ここまで読んでくださりありがとうございます!

評価ポイント、本当に励みになります!


「ブックマークや評価をいただけると、ランキングに載りやすくなり、執筆の大きな励みになります!」


今後ともよろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ