(6)見守るという選択 2
(視点:直)
直は、他の子達と比べると成長が早い事に気がついていた。
気のせいじゃない。
お姉ちゃんと、自分の成長速度が違う。
お姉ちゃんの手は、いつもと変わらず優しい。
小さくて、あたたかい手。
初めて出会った頃から、
その手は、直を包む大きさのままだった。
直の手は、少しずつ変わっていく。
指が伸びて、力がついて、
同じように重ねても、どこかはみ出すようになった。
それでも、お姉ちゃんは気づかないふりをする。
気づいていないのか、
気づいていて、言わないだけなのか。
直には、わからない。
夜、並んで歩く回廊で、
足音の間隔が、ほんの少しだけずれていることに気づく。
前よりも、
自分の歩幅の方が、大きい。
振り返れば、
お姉ちゃんはいつも通り、同じ速度で歩いている。
急ぐことも、遅れることもなく。
その背中は、
変わらない。
直は、歩調を合わせる。
無意識に、少しだけ足を小さくする。
追い越さないように。
隣に、並んでいられるように。
――この時間が、
まだ続くように。
直は、何も言わなかった。
言葉にしてしまえば、
この静かな違いが、確かなものになってしまう気がしたから。
変わっていくのは、自分だけでいい。
そう思った。
お姉ちゃんの手が、
このまま変わらず、そこにあるなら。
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(視点:紫苑)
回廊の先、柱の影に、誰かが立っている。
紫苑だった。
直は、ふと視線を感じて顔を上げる。
目が合う、ほんの一瞬。
紫苑は、何も言わない。
呼び止めもしない。
ただ、静かに見ている。
その目は、
直の背丈も、歩幅も、
そして――隣を歩く藤紫の変わらなさも、
すべてを映していた。
直は、なぜか胸が少しだけ苦しくなって、
それでも、目を逸らさなかった。
紫苑は、わずかに微笑む。
それは、慰めでも、問いかけでもない。
「知っている」というだけの、表情。
直は、その意味を理解できないまま、
視線を外す。
再び歩き出すと、
藤紫はいつも通り、直の隣にいる。
手が、重なる。
小さな手と、少し大きくなった手。
紫苑は、二人の背中を見送る。
並んで歩く時間が、
もう同じ速さでは流れていないことを、
誰よりも早く知りながら。
それでも、止めない。
見守るという選択を、
最初から、迷いなく選んでいた。
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