(4) なんか拾ってきた?
(視点:ルシアン)
気配で分かる。
フェリスが動いたな、と思った。
眠っているようで、実は完全には寝ていない。
あいつは、そういうところがある。
薄く目を開けると、
窓の方で黒い影が揺れた。
「……散歩か?」
声には出さない。
起き上がるほどでもない。
猫は自由だ。
それに、この部屋は二階だし、
フェリスは妙に器用だから、
窓の開け閉めくらい、勝手にやる。
——いや、正確には。
開ける。
閉めない。
前に学校の女子が言ってた。
「猫ってさ、なんか拾ってくるよね」
小石とか、葉っぱとか、
意味分からんものを誇らしげに。
それを思い出して、
ルシアンは目を閉じた。
まあ、すぐ戻るだろ。
外に出るなら、
風が入らないように窓閉めてほしいけど。
……無理だな。
猫だし。
そう思ったところで、
また気配が戻ってくる。
思ったより、早い。
目を細めると、
フェリスが部屋に入ってくるところだった。
何かを——
咥えている。
「……なんだそれ」
暗くて、よく見えない。
黒い毛並みに隠れて、
小さく光っている気がしたけど、
気のせいだろう。
どうせ、
外で拾った何かだ。
猫は、そういう生き物だ。
意味なんてない。
理由もない。
フェリスは、
それを床にそっと置くと、
何事もなかったように丸くなった。
「……はあ」
ルシアンは、
もう一度目を閉じる。
明日、片付ければいい。
変なものだったら、捨てればいい。
その程度の認識だった。
この夜、
自分の部屋に
星が持ち込まれたなんて——
考えもしなかった。




