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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第11章|同じ夜/まだ名前はない
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(4) なんか拾ってきた?

(視点:ルシアン)


気配で分かる。


フェリスが動いたな、と思った。

眠っているようで、実は完全には寝ていない。

あいつは、そういうところがある。


薄く目を開けると、

窓の方で黒い影が揺れた。


「……散歩か?」


声には出さない。

起き上がるほどでもない。


猫は自由だ。

それに、この部屋は二階だし、

フェリスは妙に器用だから、

窓の開け閉めくらい、勝手にやる。


——いや、正確には。


開ける。

閉めない。


前に学校の女子が言ってた。

「猫ってさ、なんか拾ってくるよね」

小石とか、葉っぱとか、

意味分からんものを誇らしげに。


それを思い出して、

ルシアンは目を閉じた。


まあ、すぐ戻るだろ。


外に出るなら、

風が入らないように窓閉めてほしいけど。

……無理だな。


猫だし。


そう思ったところで、

また気配が戻ってくる。


思ったより、早い。


目を細めると、

フェリスが部屋に入ってくるところだった。


何かを——

咥えている。


「……なんだそれ」


暗くて、よく見えない。

黒い毛並みに隠れて、

小さく光っている気がしたけど、

気のせいだろう。


どうせ、

外で拾った何かだ。


猫は、そういう生き物だ。

意味なんてない。

理由もない。


フェリスは、

それを床にそっと置くと、

何事もなかったように丸くなった。


「……はあ」


ルシアンは、

もう一度目を閉じる。


明日、片付ければいい。

変なものだったら、捨てればいい。


その程度の認識だった。


この夜、

自分の部屋に

星が持ち込まれたなんて——

考えもしなかった。


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