(2)お留守番
(フェリス視点)
部屋が、静かになる。
扉の閉まる音は、ちゃんと聞いた。
足音が遠ざかっていくのも。
それでも、この場所から何かが消えた感じはしない。
彼は行った。
だが、切れてはいない。
それが分かる。
フェリスは、床の上で丸くなる。
さっきまで人の温度があった場所だ。
まだ、少しだけあたたかい。
眠っているように見えるだろう。
だが、意識は落としていなかった。
――この時間は、待つ時間だ。
理由は分からない。
どこへ行ったのかも知らない。
けれど、戻ってくるということだけは、疑っていない。
この世界は、静かすぎる。
星の気配が薄い。
正確には、循環が整いすぎている。
引っかかりがない。
ざらつきもない。
(……まだ、壊れていない)
それが、この世界の状態だ。
フェリスは、動かない。
理由を探すこともしない。
この少年に拾われたのは、
幸運だった。
それ以上の意味は、まだ要らない。
名を呼ばれた感触が、まだくすぐったい。
ただ、同じ場所で、
同じ時間を過ごしている。
彼が戻るまで、ここにいる。
それを、フェリスは不自然だとは思わない。
名はある。
だが、それ以上のものは、まだ結ばれていない。
完全でも、不完全でもない。
ただ、ここにいる。
部屋を見渡す。
物は少ない。
整いすぎてもいない。
けれど、尖った場所がない。
この少年は、
星に触れすぎず
星からも、離れすぎていない。
危ういほど、ちょうどいい。
フェリスは、しっぽを一度だけ動かした。
窓の外を見る。
昼の空。
星は、見えない。
それでも、配置は分かる。
双子は、揺れている。
ほんのわずかに。
今は、誰も気づかない。
気づかなくていい。
フェリスは、その場から動かない。
追いかけもしない。
窓にも向かわない。
――戻ってくる。
それだけで十分だった。
丸くなり、呼吸を整える。
眠るわけでもなく、起きるわけでもなく。
名を持ったばかりの距離で、
ただ、待つ。
この時間が、
後で何かを結ぶことになるとは、
まだ知らないまま。
名を持ったばかりの距離で、ただ、待つ。




