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(3)静かな窓辺
(視点︰湊)
病院に向かったが、由良には会えなかった。
面会はできないと言われたのか。
それとも、由良が自分から姿を消したのか。
詳しいことは分からない。
ただ、理永は助からなかったと聞いた。
夜になる。
湊は部屋の灯りをつけず、窓際に立っていた。
理永は、もういない。
その事実だけが、やけに鮮明だ。
由良は、あの場にいた。
それでも間に合わなかった。
そういうことなのだろう。
理屈はそれで足りる。
窓の外を車が走る。
赤いテールランプが、ゆっくりと遠ざかっていく。
昼間に見た赤い痕が、ふと重なる。
湊は目を伏せた。
怒りも、涙も出ない。
ただ、静かだ。
いつもなら、何か言えたはずだった。
空気を軽くする一言。
場違いなくらい明るい声。
けれど今は、何も浮かばない。
言葉が、どこにも見つからない。
湊はそのまま動かなかった。
表情のない顔で、窓辺の夜を見つめた。
【二幕】
長いプロローグでした。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
失われたものの先へ、物語は続いていきます。




