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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第34章|繋いだ温度
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(1)微かな異変

午後の講義は、空気がゆるい。


窓から差し込む光が、机の上を白く照らしている。


理永はノートを開いたまま、視線を落としていた。


文字が、にじむ。

まぶたが、重い。

昨夜も、夢を見た。

覚えていない。


けれど、胸の奥の重さだけは、消えていない。


ほんの一瞬、目を閉じる。

そのつもりだった。


次に意識が浮上したとき。

黒板を叩く音が、やけに遠くから響いた。


「……理永?」


小声。

横から、由良の声。

はっとして顔を上げる。

視界が揺れる。

ノートには、途中で止まったままの文字。

自分の指が、止まった位置のまま固まっている。


「寝てた?」


由良の声は責めていない。

ただ、確かめるだけ。


「……少し」

答えながら、喉が乾いていることに気づく。


前の席から、くるりと振り返る影。


「珍しいな」


湊が、小さく笑った。


「理永が講義中に落ちるなんて」


軽い口調。

でもその目は、ほんの少しだけ観察している。


「最近、寝不足?」


由良が静かに続ける。

理永は一瞬、言葉に詰まる。

寝不足。

そう言えば、それで済む。


「……かも」

曖昧に笑う。


その瞬間、胸の奥がひりついた。

嘘ではない。

でも、本当でもない。


「ちゃんと寝ろよ」


湊が前を向きながら言う。


「この時期、体調崩しやすいし」


周りの雑音が戻る。


「うん……気をつけないと」


講義は続いている。

理永は姿勢を正す。

けれど、

体がひどく重い。

まぶたの裏に、暗い残像が残っている。


ほんの一瞬。

あかいろが、にじんだ気がした。

瞬きをする。

何もない。


それでも。

胸の奥の重さは、

昨日よりも、少しだけ深くなっていた。




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