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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第30章|冬の告白と星の下
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(1)冬の光、由良の家

(視点:理永)


由良の邸宅の窓から、淡い陽が差し込んでいる。


冬の午後。


暖炉の火が小さく揺れ、暖炉の前でミケが丸くなっている。

揺れる橙の光が、部屋にやわらかい影を落としていた。


理永はソファに座り、マグカップを両手で包む。

指先にじんわりとした温かさ。


「……落ち着くね、ここ」


「そうか? 良かった」


由良は向かいではなく、隣に座っている。

肩が、わずかに触れそうな距離。


それが、もう特別じゃないことが——

なぜか、毎回胸にくる。


(慣れた、はずなのに)


視線が合う。

逸らさない。

逃げない。


それだけで、心臓が少し速くなる。


壁際のローチェスト。

その上に、小さな宝石箱が置かれている。


深い色の蓋。装飾は控えめで、静かな存在感。


理永は、ただ何となく目を向ける。


「それ、新しい?」


「いや。ずっと持ってる」


由良はそれ以上、何も言わない。

ただ指先で、そっと蓋に触れる。


開けない。

見せない。


触れ方だけが、やさしい。


まるで——

誰にも触れさせたくないものみたいに。


(大切に仕舞われた、宝物みたいに)


マグカップのミルクティーが空になる。


「……おかわり、入れてくる」


由良は立ち上がる。

暖炉の火が一瞬、彼の横顔を照らす。


理永はその背中を見つめる。


(ずっと持ってる、か)


理由は分からない。

でも、胸の奥が、ほんの少しだけざわついた。


怖さじゃない。

懐かしさに似た、何か。


暖炉の火が、ぱちりと鳴る。


理永はカップを握り直した。


温もりは、ちゃんとここにある。




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