表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第29章|秋の体温
132/195

(1)色づく時間

(視点:理永)


秋学期の時間割を前に、理永は小さく息をついた。


文学部・異種族人文学研究。

専門科目が増え、空き時間は思ったより少ない。


窓の外では、銀杏の葉がゆっくりと色づき始めている。

夏の強い光はやわらぎ、空気は澄み、少しだけ冷たい。


指先で時間割の紙をなぞる。

インクの匂いが、ひやりと鼻をかすめた。


(……会える時間、減るかも)


そう思った瞬間、自分でも驚く。


忙しくなることよりも、

先に浮かんだのは、そのことだった。


胸の奥が、ほんの少しだけ静かに疼く。


理永は首を振り、イヤホンを耳に差し込んだ。

気分転換、と自分に言い訳をする。


流れ出したのは、やわらかなピアノの旋律。


窓の外で、風に舞った落ち葉がひらりと揺れる。

音と光が重なり、世界が少し遠くなる。


その中で、ふと。


由良の横顔が浮かぶ。


夕暮れの光に縁取られた、あの穏やかな表情。

からかうようで、でもどこか優しい声。


胸が、静かにあたたまる。


夏の頃みたいな、焦るような鼓動じゃない。


じんわりと、奥から広がる温度。


(……また、考えてる)


無意識だったことに、今さら気づく。


会えない時間にまで、

自然に彼を思い出している自分。


それが嫌じゃない。


むしろ、少しだけ嬉しい。


理永はイヤホンを外し、もう一度時間割に視線を落とす。


忙しくなる。


でも、その合間に会えたら――


きっと、うれしい。


銀杏の葉が一枚、はらりと落ちた。


季節が進む。


恋も、ほんの少しだけ、色づいていく。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ