(3)
(視点:由良)
「俺のせい?」
その言葉が落ちた瞬間。
理永の呼吸が、明らかに止まった。
目が大きく揺れる。
焦ったように視線を逸らし、
「もぉ、由良ってば、からかわないでよ」
少しだけ強がる声。
けれど、語尾がわずかに震えている。
――そんな顔を、させたかったわけじゃない。
いや、違う。
させたかったのかもしれない。
けれど、こんなにも真っ直ぐ返ってくるとは思っていなかった。
その言い方は、拒絶じゃない。
むしろ逆だ。
動揺している。
隠そうとしている。
でも、隠しきれていない。
頬に差した赤みが、夕暮れよりも濃い。
「からかってないよ」
気づけば、声が低くなっていた。
半歩、近づく。
理永の肩が小さく跳ねる。
「そんな顔してるのに?」
視線を逃がさせない。
理永は、ほんの一瞬だけこちらを見て――
すぐにまた逸らす。
――逃げるな。
心の奥で、ほんの一瞬だけ本音が零れる。
行くな。
離れるな。
胸が、苦しい。
その一瞬。
胸が、苦しい。
可愛いと思うより先に、
愛おしいと思ってしまった。
――まずいな。
本気で揺れているのは、俺だ。
理永の指先が、ぎゅっと鞄の紐を握る。
その小さな震えが、由良の理性を削る。
触れたい。
今すぐ、確かめたい。
けれど。
まだ、触れない。
夏の終わりの風が吹き抜ける。
涼しいはずなのに、
胸の奥だけが熱い。
「ここまで読んでくださりありがとうございます!評価ポイント、本当に励みになります!もしよろしければブックマークもポチッとしていただけると、ランキングに載りやすくなり、執筆の大きな力になります!
今後とも、よろしくお願いいたします」




