表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第3章|守られた世界の歪み
13/67

星の閑話Ⅱ|待つ星

(ポルックス視点)


待つ、という行為を、

ポルックスはそれまで知らなかった。

星は巡るものだ。

離れても、必ず交わる。

双子であれば、なおさら。


だから――


カストルは弟が落ちるときも、恐れはなかった。

追えばいい。

そして、合流する。

それが当たり前だったから。




地上は、思っていたより温かい。

空気は重く、足元は確かで、星であった頃の軽さは、もうない。

それでもポルックスは、同じ場所に留まっていた。

カストルは、後を追ってくるはずだ。

自分よりも強く、迷いのない兄だから。


――少し遅れているだけ。

そう思いながら、

夜がひとつ、またひとつと過ぎていく。




遠くで、灯りが揺れている。

あの家だ。

少年と、猫がいる。


ルシアンは、空を見上げることが増えた。

占うためではなく、

ただ、何かを待つように。


フェリスは、彼の足元に座り、

同じ方向を見ている。


ポルックスは、その様子を

少し離れた場所から見ていた。

近づかない。

触れない。

ただ、いる。

不思議な感覚だった。

誰かに見られているのに、

裁かれていない。

測られていない。

ただ――

そこに在っていい、という空気。




「……遅いな」

思わず、そう呟いていた。

声に出した瞬間、

胸の奥が、わずかに軋む。

待つ時間が、

初めて「長い」と感じられた。


星だった頃、時間は距離と同じだった。

離れても、必ず戻るもの。

けれど今は違う。

戻らない可能性が、

ほんの僅か、影を落とす。





フェリスが、ふと顔を上げる。


カッパー色の瞳が、一瞬だけこちらを向いた。

見えているのか、いないのか――

判断がつかないほど、静かな視線。

それでもポルックスは、

なぜか安心した。

ここで待っていても、

壊れはしない。

少なくとも、

この夜のあいだは。



ポルックスは、再び空を見上げる。


星は、まだそこにある。

けれど、弟の光は見えない。

「……大丈夫だ」

誰に言うでもなく、

そう言い聞かせる。

信じている。

それだけは、嘘じゃない。

待つことが、

こんなにも重いと知る前に――

ポルックスは、ただ兄を信じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ