(7)遠くて、近い
数日前に、初めてポイントをいただいていることに気づきました。
星をつけてくださった方、本当にありがとうございます。
とても嬉しくて、物語を続ける力をもらいました。
(視点:理永)
講義も終わり、課題を片付けて帰る道。
頭の中には、由良の何気ない視線や仕草がちらつく。
女子に囲まれている由良を見たときの、もどかしさも残ったまま。
足取りは自然に歩いているつもりでも、胸の奥は少しざわつく。
手のひらが軽く汗ばんで、呼吸が少し速くなるのを感じる。
「……なんで、こんなに気になるんだろう」
自分でも答えは分かっている。
好きだから、触れたいから、近くに居てほしいから。
でも、そう思う自分を素直に表せない。
空は夕暮れの色を少しずつ濃くしていく。
冷たい風が頬をかすめるたび、理永の心は少し寂しくなる。
由良が少し遠くにいるだけで、何となく胸の奥が穴のように空いたような気分になる。
家が近づく。
ドアノブを握る手に、ほんの少しだけ力が入る。
“早く由良にまた会いたい”
心の中で、そっと呟く。
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(視点:由良)
帰宅途中の理永を、少し離れた位置から見つめる。
理永は歩きながらも、心の中でまだ何かに揺れているのが分かる。
手の動きや視線のわずかな迷い、呼吸のリズム。
由良はそれを見逃さない。
(ああ、やっぱり、俺のことを気にしている。)
でも、理永にはまだ気づかれない距離を保つ。
近づきすぎず、遠すぎず。
ただ見ているだけ。
時折、理永がふと空を見上げるたびに、胸の奥が温かくなる。
その表情、手の動き、歩幅――すべてが理永の心の揺れを物語っている。
由良は静かに微笑む。
まだ言葉も触れも交わさずに、理永の気配をそっと確かめるだけ。
理永の心をもっと知りたい――そう思う。




