(6)影の間にて
(視点:理永)
講義を聞き、レポートの課題に取り組む。
頭の片隅では、あの日の由良との帰り道が思い出される。
でも、教室の中では、クラスの女の子たちが由良に話しかける。
自然に、理永の目はそちらを追ってしまう。
「……女子、女子、女子か。俺、完全に負けてるじゃん…」
湊の声が、茶化すように響く。
「あーあ、理永、焦ってるなー。可愛いなー」
理永は思わず小さく息を吐く。
もう大丈夫だと思ったのに、視界に入るとやっぱり気になってしまう。
由良の視線が自分に向くと、すぐに落ち着く。
理永の胸は、またざわついて、もどかしい。
「湊くん…茶化さないでよ…」
理永は思わず、吐息混じりに小さく呟く。
不安が、胸の奥でざわめく。
好きだとわかったからこそ、失うのが怖い
距離感も、視線も、触れるか触れないかの間合いも、すべてが心を揺さぶる。
理永はまだ、この感覚を言葉にできない。
ただ、隣で由良の様子を感じるだけで、心の中でぐらつきながらも、自分の気持ちを確かめている。
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(視点:由良)
由良は、女子たちの間に立ち、軽く会話を交わす。
目線や仕草は自然に、でも心のどこかで理永の反応を確かめている。
理永の揺らぐ目線、不安そうな表情やしぐさ。
由良は見逃さない。
“焦ってるな”
心の中でくすっと笑う。
だが、あくまで静かに冷静に。
理永を縛らず、でも確実に囲い込んでいく。
――その距離感。
理永が気づかないうちに、二人の距離は少しずつ縮まっていく。




