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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第27章|その色は
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(5)静かな確信

(視点:理永) 


由良の手を振り払うことができなかった

理由は明白

好きだから...。


胸の奥がざわつきながらも、確かな感覚。

手首に触れた温もりが、ただそこにあるだけで、こんなにも落ち着く。


視線を少しだけ横に向けると

蜂蜜色の瞳が、まっすぐこちらを見ている。


ドキリと、胸が跳ねる


その蜂蜜色の瞳に、まるで何もかも見透かされているようで

理永は小さく息をついた。



ただ、隣にいるだけで、不安は少しだけ薄れていた



―――――――――――――――――――

(視点:由良) 


夜。

部屋の明かりは、机のスタンドだけ。


川崎由良は椅子に座ったまま、何もしていなかった。

開いたままのノート。

進まないページ。


代わりに浮かぶのは、夕暮れの帰り道。


「……わざわざ言わなくていい」

拗ねた声。

視線を逸らしたまま、赤くなった頬。


そして――

「……由良」


呼び捨て。


静かな部屋で、自分の呼吸がやけに大きく聞こえる。


「理永さん」

いつもの呼び方。無意識に口に出してみる。

問題はない。


なのに。

あの瞬間。

くん、が抜けた。

ほんの小さな違い。それだけで、胸が静かに揺れる。


由良は目を閉じる。

理永の声を、もう一度なぞる。


『……由良』


あれは偶然ではない。

自覚していないだけだ。


胸の奥が、じんわり熱を帯びる。

由良は片手で目元を覆い、指の隙間から吐息を漏らす。


「……困ったな…」

小さく、幸せそうなため息。

困っているわけではない。

むしろ――確信している。


逃げない指先。

引かなかった視線。

あれは拒絶ではなかった。


――好き。


まだ言葉にはしていない。

けれど、もう揺れていない。


由良はゆっくりと手を下ろす。

蜂蜜色の瞳に、わずかな赤が差す。


「並んでいられれば、今は十分だ」

静かに独り言。


今はまだ、奪わない。縛らない。

けれど、隣は、譲らない。


スタンドの灯りが落ちる。

暗闇の中で、由良は目を閉じる。

理永の呼び声を、確かに覚えたまま。




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