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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第27章|その色は
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(4)並ぶ影

(視点:由良)


放課後の廊下。

理永は少し早足で歩く。

後ろから、足音。


一定の距離を保ったまま、由良がついていく。

追いかけているわけじゃない。

でも、離れない。


昇降口を出る。

夕方の光が長い影を作る。

ふと、影が重なる。


隣に並ぶ。

由良は歩幅を合わせる。


「急いでいますか」


「別に」

短い返事。声が少し硬い。


沈黙。

風が吹く。


「さっき」

由良が静かに言う。


「気にしていないなら、それでいいです」


理永は足を止める。


「……何が」


由良も止まる。

真正面ではない。

横並びのまま。


「必要なことだけです」


少し間。


「それ以上は、ありません」


理永の胸がきゅっと締まる。

それは説明? それとも――


「……わざわざ言わなくていい」

拗ねたような声になる。

由良がほんの少しだけ驚く。


「そうですか」


でも、その瞳はやわらぐ。


――ああ、そういうことか。

今、少しだけ理解する。

理永のざわめきの正体を。


―――――――――――――――――――


(視点:理永)


夕暮れの帰り道。

二人の影が、長く伸びる。

理永は前を向いたまま歩く。


(……なんで、来るかな)

隣にいるのに、落ち着かない。


(……わざわざ言いに来なくていいのに)

少し拗ねた口元。

由良は横目で理永を見る。

頬が、ほんのり赤い。

視線は合わない。


でも。

手は、ぎゅっと鞄の紐を握っている。


――ああ。


胸の奥で、静かに何かが繋がる。

由良は足を止める。

理永が一歩先に出る。


その瞬間。

そっと、手首に触れる。


強くない。

逃げられる程度の力。


でも、離さない。

理永の体がぴたりと止まる。


「……由良?」

呼び方が、少し揺れる。

そのとき、無意識に――


――由良


思わず出た呼び捨て。

自分でも気づいてない。


由良は微かに笑う。

ただ、静かに。


「逃げないでください」

声は穏やか。

でも迷いはない。


理永の心臓が跳ねる。


「逃げてないし……」

弱い否定。

由良は、ほんの少しだけ手を引く。

距離が、半歩縮まる。


「では、並んでください」


目が合う。

蜂蜜色の瞳が、まっすぐ理永を映す。


理永の胸のざわめきが、すっと形になる。


――気づいてる。

この人は、わかっている。

自分の揺れも。

自分の“好き”も。


なのに。

離さない。

理永は、小さく息を吐く。


「……離して」

言葉とは裏腹に、手は引かない。

由良の指先が、ほんの少しだけ強くなる。


「嫌です」

静かに、即答。


その瞬間。

理永の胸の中の色が、はっきりと染まる。


――好き。


確信は、もう揺れない。

由良はそれを見ている。

理永の瞳の変化。

逃げなくなった指先。


確信する。


(やはり、そうでしたか)


でも、口にはしない。

ただ。

並んで歩く。

手を繋いだまま。




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