(2)静かなざわめき
放課後の教室。
理永はノートを片付けながら、窓の外をぼんやり眺めていた。
さっきの昼休みのこと、頭から離れない。
――由良、昨日の……
背後から声がかかる。
「由良くん、ちょっといいですか?」
理永の視界の端、
クラスメイトの女子が由良の傍に立っていた。
笑顔は柔らかいけれど、目には興味津々な光。
由良はすっと立ち上がり、落ち着いた声で答える。
「何でしょう」
女子は少し照れながらも、質問を続ける。
「その……次の課題、手伝ってくれませんか?」
由良は軽く頷く。
「もちろん、いいですよ」
近くに座る理永の方をちらりとも見ずに。
言葉も、動作も、何も変わらない。
――な、なんでこんなに普通なの……
胸がざわつく。理永は思わず自分の手元のノートを握り直す。
嫉妬、というほど激しくはない。
けれど、心の奥が少しざわつく。
女子と話す由良を見ながら、理永は気づく。
――あ、私、嫌なのかも。
由良は人気がある。静かで整った振る舞いだから、自然と人を惹きつける。
でも――
理永の胸を打つのは、由良が“ちゃんと距離を保っている”こと。
必要以上に親密になろうとしない。
無自覚にモテるわけじゃない。
それが、余計に胸をくすぐる。
理永はこっそり息を整える。
――あぁ、私……これ、意識しちゃってる?
由良は女子に丁寧に答え、笑顔を返す。
でも、手は届かない距離。
教室のざわめきの中で、理永の心だけが、静かに色づいていった。




