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(3)外を知らないという危うさ
龍神殿の高い窓から、星が見える。
「ねえ、あれは何?」
ひとりの子供が指差す。
星は、星座としてではなく、
ただの光として瞬いていた。
「……遠いところにあるものだよ」
と、教えられた答え。
けれど、その子は首を傾げる。
「遠いのに、どうして見えるの?」
誰も、すぐに答えられなかった。
外の世界を知らないということは、
危険を知らないということ。
犠牲を知らないということ。
そして――
選択の重さを知らないということ。
龍神殿は、まだ安全だ。
だが安全であるがゆえに変化に最も弱い。
遠くで、何かが確実に崩れている。
星が落ち、天秤が置かれ、地上へ向かう者たちがいる。
その波は、
いずれ必ず、この場所にも届く。
守られた子供たちが、
初めて「外」を知るその日――
世界は、もう同じ形ではいられない。
善意で作られた檻




