表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第26章|世界は色づく
118/190

(4)予定外の午後

講義終わりの大学構内、

レポート、提出期限もうすぐだ。

内容は「異種族との共存について」。


理永はノートを抱えながら言った。


「由良さん、レポートなんだけど……」


「はい」


「来週提出で。“異種族との共存”についてなんです」


由良の視線が一瞬だけ止まる。


けれどすぐに、いつもの穏やかな顔に戻る。


「図書館に行きますか?」


「はい、そのつもりでした」


いつも通りの流れ。


並んで歩くのも、もう自然だ。


けれど今日も、少しだけ意識してしまう。




図書館の自動ドアの前で足が止まった。


貼り紙。


《本日、設備点検のため臨時閉館》


「え……」


理永が小さく声を漏らす。


「そんなこと、あります?」


「珍しいですね」


静かな返事。


理永は少し困ったように笑う。


「どうしましょうか……」


カフェは騒がしい。

家に帰るにはまだ早い。

提出日は待ってくれない。


ほんの少しの沈黙。


由良が言う。


「よろしければ、うちに来ますか」


さらりと。


特別な誘いという顔をしないのが、ずるい。


理永は瞬きをする。


「……お邪魔じゃなければ」


「問題ありません」


即答。




あの邸宅を思い出す。


以前来たときは、ひとりで訪ねた。あのときより緊張は少ない。


でも――


今日は“勉強”とはいえ、

ふたりきり。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


理永がうなずく。


並んで歩き出す。

邸宅までの道、蝉の声がうるさい


並んで歩く、

肩や腕が触れ合う距離。

指先が触れた、と思った次の瞬間、

そっと手を包まれる。

由良の手は、ひやりと冷たかった。


屋敷までの道は、初めて来たときよりも、ずっと長く感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ