表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
第25章|告白の行方 2
112/190

(2)境界

紅茶をひとくち飲む。

やわらかな香りが広がる。


(……おいしい)


思わず、ほっと息がこぼれた。


やっぱり。


由良くんとは、驚くほど気が合う。


好きな茶葉も、温度も、甘さも。


何も言わなくても、分かっている。


そのことが、嬉しくて。


少しだけ、怖い。


理永はカップを両手で包む。


――逃げない。


聞く覚悟を、ここで決め

顔を上げる。


「由良くん」


由良の瞳が、静かにこちらを見る。


揺れはない。

けれど、どこか遠い。


「私、人間だよね」


唐突な問い。


由良の指先が止まる。


一瞬だけ、空気が張り詰めた。


「……ああ」


低い声。


「お前は、人間だ」


確認するように、はっきりと。


理永は、うなずく。


「じゃあ」


息を吸う。


「由良くんは?」


沈黙。


長い、長い沈黙。


夕暮れの光が、ほとんど消えかけている。


影が深くなる。


由良は目を閉じた。


「俺は――」


静かな声。


「人間じゃない」


はっきりと。


言い訳も、冗談もない。


ただ事実として。


部屋の空気が、ひやりと変わる。


由良がゆっくりと目を開く。


その瞳の奥に、わずかな赤が滲む。


「俺は...」


「吸血鬼だ」


言葉が、落ちる。


理永は、瞬きを忘れた。


頭の中で、音が消える。


心臓の鼓動だけが、やけに大きい。




(……ああ、やっぱり)


驚きはある。

怖さも、ないわけじゃない。


でも。

逃げたいとは、思わなかった。


ゆっくりと、息を吐く。

「そっか」

その一言に、震えはない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ