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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
【第二幕】 第23章 | 出会い
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(3) 偶然の重なり

それからの数日、

理永は図書館で由良と顔を合わせるたびに、胸の奥がソワソワ落ち着かないのを感じていた。


教科書を取りに来ただけのつもりでも、

視線が自然と向かってしまう。

由良はいつも静かに、でも確実に存在感を放っていて、理永の心を掴んで離さない。


「……またいる」


小声で呟き、理永は手元の本をぎゅっと握る。

彼は勉強に来ているだけなのに、理永の意識は完全に由良に釘付けだった。


ある日、ついに理永は意を決して話しかけてみることにした。


「あの……昨日の授業の課題、理解できましたか?」


少し声が震えたけれど、由良は目を上げて、ゆっくり微笑む。


「うん。大丈夫だと思う」


その声は穏やかで、理永の緊張を溶かすようだった。

思わず頷き、二人の間に自然な空気が流れる。


「もしよかったら、一緒に考えませんか?」


理永の言葉に、由良はほんの少し目を細めた。

頷きながら椅子を少し寄せる。


「……いいよ」


二人で教科書を並べ、ページを覗き込む。

理永は、初めて自分から距離を縮められたことに胸が高鳴るのを感じた。


図書館の静けさの中で、二人の世界だけが少しだけ近づく。


―――――――――――――――――――


そして数日後。


偶然にも、理永は大学の外でも由良を見かけるようになる。


駅前のカフェで、キャンパスの並木道で、バス停で。


偶然が重なり

必然のように出会ってしまう。


「……また、会ったね」


小さな声でつぶやく理永に、由良は穏やかに微笑む。


「偶然、だね」


でもその瞳には、理永だけに向けられた温かさがあった。


理永は思わず目を逸らす。

胸の奥がぎゅっと締めつけられる。


(……なんでだろう、会うたびに心がざわつく)


どの人生でも、恋に落ちるのは理永から。

それを由良は、静かに受け止めるだけ。

でもそれでいい。


少しずつ、少しずつ。

二人の距離は、静かに近づいていく。


理永は知らない。

この“偶然の重なり”が、意図されたものだということを。


図書館でも、大学の街角でも、

新しい日常の中で、二人の物語は静かに動き始めていた。


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