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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
【第二幕】 第23章 | 出会い
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(2) 図書館の距離

理永は背筋を伸ばしたまま、ページに目を落とす。

でも、文字は頭に入らない。


向かいに座る由良の存在が、視界の端で静かに光を放っているみたいだった。


本を開いたまま、ちらりと横を見る。

長い睫毛の影。落ち着いた輪郭。琥珀色の髪が柔らかく光を受けて揺れている。


(……なんでこんなに気になるんだろう)


理永は小さく息をついた。

自分でも理由がわからない。


初対面なのに、心臓が少し早く打っているのを感じる。


「……集中しなきゃ」


自分にそう言い聞かせ、ページをめくる。

でも、目は自然と由良の方にいっている。

言葉にしたくないけれど、どうしても目が追ってしまう。


由良は本を開き、静かに読んでいる。

声も動作も控えめで、それでいて存在感は圧倒的だ。


(こんな人、本当に大学にいるのかな……)


理永は思わず小さく笑った。

自分の心臓の音を誤魔化すように、机を軽く叩いてみる。

しかし、それでも胸の奥のざわめきは収まらなかった。


「……やっぱり、変わった人」


独り言に近い声が漏れる。

由良は微動だにせず、ページの隅でその言葉を聞いたかもしれない。

それでも、理永は気にせず視線を本に戻した。


心の中では、言葉にならない想いが膨らむ。


なぜか、彼のことをもっと知りたいと思った。


話したい。隣にいるだけで、心が落ち着かない。


ページをめくる指が少し震えているのに気づき、理永は顔を赤くした。


(……変だな。自分、こんな気持ち、初めてかも)


そう思った瞬間、由良の視線が自分に向いた。

目が合う。


視線だけで、世界の静けさが増した気がした。


「……大丈夫?」


低く、穏やかな声。

理永はびくっとして、本を閉じかける。

でも、胸の奥が温かくなる。


「だ、大丈夫です……」


声が少し震えているのを自覚し、

理永は必死に背筋を伸ばす。

由良は軽く頷き、再び本に目を落とした。


理永もページを開く。

でも、今度は少しだけ前より落ち着いていた。


(……あの人、何だろう。あんなに綺麗な人、会ったら忘れないのに)


小さな疑問と、ほんの少しの期待。

理永は知らない未来に、少し胸を躍らせていた。


図書館の静寂は、今日も変わらず降り注ぐ。

ただ、その中で、二人の距離だけが静かに近づいていくようだった。


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