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(3)偶然の頁
大学図書館の午後。
静かな閲覧席で、由良は本を開いている。
視線は文字を追っているのに、
意識は別の場所にある。
——今日だ。
扉が開く音。
柔らかな足音。
由良は顔を上げない。
けれど、わかる。
彼女が入ってきた。
少し遅れて、椅子を引く音。
数席離れた場所に、ひとりの少女が座る。
リエナ。
まだ、ただの大学生。
転生の記憶もない。
魔女の気配もない。
ただ、静かに本を読む横顔。
由良は一度だけ、視線を向ける。
偶然を装った距離。
彼女がページをめくる。
同じ瞬間、由良もページをめくる。
わずかなずれ。
それが、始まりだった。
しばらくして、リエナが困ったように眉を寄せる。
「……あれ」
小さな声。
由良は顔を上げる。
「探し物ですか?」
自然な声。
自然な間。
すべて計算された、自然。
リエナは少しだけ驚いて、微笑む。
その笑顔を、由良は静かに受け止める。
この瞬間を、何度も知っているかのように。
けれど。
この世界では、まだ初めてだ。
第1幕完結までお付き合いいただき感謝です!ここで一旦区切りとなりますが、2幕も連載中です。続きも気になる方はぜひブクマを!よろしくお願いいたします」
今後ともよろしくお願いいたします




