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③堕女神の工程  作者: 邑 紫貴


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5/11

作るのは……


【バシッ】

廊下に響く音。ざわめきから、一気に静寂を呼んだ。

頬を叩かれたのは、奇利だった……。

叩いたのは、俺の知らない女。……先輩だろうか?

「あんた、どういうつもり?!人の男……お金で、なんでもするのね!知ってるのよ?前いたところで……っ……」

怒鳴る先輩が、口を閉ざしたのは……過去を口にしたのを、奇利が睨んだから。

「とにかく!あいつに今後、近づかないでよね!!」

捨て台詞に、走り去る彼女……。

残された奇利を、遠巻きにヒソヒソ話。近づくのは、悪魔と女神。

「バカね。どうして避けないの?」と、言った後……悪魔は周りを睨む。

眼を逸らし、外野が散っていく。

「ほら、ハンカチ……。口が切れてる……よ。」

泣きそうな顔で、秋が奇利を気遣う。友達だな……

「…………。」

無言で、奇利は秋の手当てを受け……呆然としている。

俺は、女性のことに口出しすべきでないと……様子を見守るだけ。

「浩。暇なら、お・い・で♪」と、恵理夏にいらっしゃ~い……と……誘われる。

俺がいるべき状況を、恵理夏が知ってるんだ。

「……悪魔が呼んでる。」と、ふざけながら……。

何かが、あったのを知る。

「奇利……?」

「……男は、変な……プライド……捨てればいい。」

奇利の、涙と……この言葉の意味を知るのは……俺でよかったのだろうか?

俺が奇利に近づいた後……恵理夏が、秋を連れ……距離を取った。

気づかなかった……俺の知らない2人の会話……


「コスモス……。引け。……良い女は、それが出来ないと……な」

「……うん。」

秋の、俺を見つめる……悲しい顔……

特に、何かを話したわけじゃない。

ただ、泣きもせず……奇利は頬を冷やし、窓の外を見つめた。

奇利とあの先輩の会話……

『人の男……お金で、なんでもするのね』『前いたところで……』を思い出した。

俺も窓にもたれ、外を見る。

「……プライド……か……」

男には、変なプライド……確かにある……な。

秋に対する態度も……それかもしれない。

「捨てて……」


【キーンコーン~】授業の開始……。

「さ、中に入るぞ!」

「……あぁ。」

奇利は、普通の態度……。いや、少し……無理をしている……か。

奇利は、どうして……お金に固執する?……男……か。

変な、プライド……ね。俺が奇利の男だとしたら……。

考えられる状況は、好きな男のためにお金を稼ぎ……持ってきたお金を受け取らない……プライドか?

借金の男……。それも、受け取らないなら……悪い男……というより、人が良すぎて騙された……かな?

年上……か。

転校は、奇利の両親が亡くなったから……。手に入った、財産……を受け取らなかった?

……奇利は、どんなことをしても……自分の力でお金を手に入れるか。

奇利……お前も、変なプライド……いや、意地になってるんだ。不器用だな……

奇利も、普通にしていれば……男が寄ってくる。

いや、お金にこだわるから……お金と駆け引きするような男がいるんだろう。

今回は、それ……か。


「浩……あんた、素質あるわね。クスクス……」

「うわぁあっ!!」

いつの間にか、授業が終わっていた。

恵理夏が俺の机に座り、あごに指を滑らす。

【ゾワッ……】

「え、り、かぁ~~~?」

「なぁにぃ?」

……奇利の姿がない?

「おい、奇利は……?」

「え?倍返し!」

…………。

倍返し……?

「ちょ、それ?!!」

偉そうに、何か問題でも?という態度の恵理夏。

……こいつでは、話にならない!

「秋、……秋も、いない……。まさか!」

「……クスッ……秋、女をみせてね?」

そんな声が聞こえるはずもなく……


恵理夏を残し、2・3年の教室へ走る。

見当たらない!!

奇利……秋……俺は……くそっ!!


「……お、覚えてろ!」

ぼろぼろの姿の先輩?!

俺の横を、古臭い捨て台詞で通り過ぎる。

その先に、木に隠れメモを取る秋。に、殆んど無傷の奇利。

俺は、迷わず……秋に抱きついた。

「……浩……君?」

分かる……自分が震えている。

秋に、何かあったら……それが、怖かった。

俺、秋のこと……好きだ……。




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