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③堕女神の工程  作者: 邑 紫貴


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2/11

女神降臨……行き過ぎ?


日直で、科学室の片づけをしていた俺と秋。

【ビシャッ】水しぶきの大きな音。

まさか……思った通り、秋が水を頭からかぶって呆然と立っている。

「バカ!何やって……」

俺の声に、何が起きたのか理解する。

「やだ……。服、濡れちゃった~~。う゛ぅ……」

近づいて、準備室に常備されているタオルを頭にのせる。

「ほら、ちゃんと……拭いて!!」

慌てて目を逸らす。

制服が透け、下着が俺を誘惑した。

「ね……色っぽい?」と、タオルの隙間から上目で見つめる。

「……ふざけんな!!絶対、お前なんかに手は出さない!」

「ちぇっ……」

気が抜けない。今のこいつに、恋?ありえない……

悪魔に洗脳されて、俺の好きな秋から遠くかけ離れた存在になってしまった。

だから、今は絶対に……無い!!

秋は、いきなり服を脱ぐ。

「ぎゃぁ!!なっ……何……やって!!」

俺は、慌てて制服を着せる。

「H!」

「はぁ?意味が分からん……。服を脱ぐお前のほうが、異常だろ?」

「チラリリズムが駄目なら、脱いでみろって……」

「誰がだ?!」

やっぱり、あの悪魔の入れ知恵か!!

「い……ひゃ……いふぁ~~」

両方のほっぺたを引っ張る。

「……恵理夏だな?」

「ち、違う……もん」

目を逸らし、吹けもしない口笛を吹くまねをする。

……ちょっと、可愛い。いや、騙されないぞ?

いらない知恵を植え付け、俺たちの様子を楽しんでいるに違いない!

くそ~~あの女!悪魔の尻尾が見える。

「ひどいよう~。ね、浩君……」

「何だよ?」

「えと……ね。抱いてもいいよ?」

意味の分かっていないのが、丸分かりの台詞。

頭に、怒りマークが増える。

~~っ!!苛立ち、つい……【バシッ】頭を軽く叩く。そう、軽く……。

小さい頃のくせだ。……幼い時の嫉妬や苛立ち……言葉に出来なくて、出てしまう……愛情のしるし。

「……S?」

「……はぁ。」

ため息。話を逸らそう。

「秋、これ……貸してやる。ちゃんと夜、返せよ?」

俺の制服を被せる。

「お誘い?」

どこまで洗脳??

はぁ……昔は、こんなじゃなかったのに。

……友達か。(正確には、悪友?悪魔の生贄??)

恵理夏と出逢って、純粋な初恋の君は消えたんだ。

ただでさえ、中学のとき必死で我慢していたのに……。

積極的なのは……ちょっと……いい。いや、他の奴に見せたくない。

……いや、違う……好きじゃない!!

はぁ……どんどん……消える俺の女神様……

確かに……堕女神……。

どうして、秋から友達になった?何か、理由がある……か。

でも、「秋は……」俺のこと……

「何?」

タオルで、髪を拭く姿は……女神。

……クラクラする。

「いや、黙って……拭いてろ。」

片付けに戻り、一人作業を進める。

好きでもない男を、誘惑したり……する……?

いや、秋は……知らない。自分の言葉が、何を意味するのか……。あの悪魔……

「浩君……」

「何だ?」

「……今の私は嫌い?」

……え?……

秋の方を見ると、真剣な顔で……机の上に三角座り。

スカートの中が、見えそうだ……

【ガシャッ】手に持っていたビーカーが、床に落ちる。

「ばっ……何を急に。」

視線を慌てて逸らし、割れたガラスを集める。

「ね……嫌い?」

【ツキッ……ン】

「痛っ……つ~~」

焦り、ガラスの破片で指を切った。

「バカ……」

血のにじむ人差し指を、秋が口に含み……舐める。

「秋……ちょ、汚いか……ら……」

目を閉じ、俺の指に……

「~~っ!!」

やばい……何かが、やばい!!これは、天然だ……

「いいよ、もう……大丈……っ」

目を上目に、口から出された指を……ペロッ……

頭が、ぼ~っとする。

「……水……」

「……へ?」

「水で洗って、バンドエイド貼るから。」

水で流しながら、少し……残念なような……

絆創膏を貼る前に、舐めたい……。いや、何を……変態か!!

小学生の笛を舐めるみたいな……俺の頭も、おかしい!

きっと、悪魔に……知らない間に洗脳されているんだ!!

「浩君、返事……聞いてないよ?」

【ドキッ!!】

心臓が跳ねる。ドキドキ……

「き……嫌いじゃない……ぞ?」

泣きそうな顔に、つい……

そして、俺の返事に最高の……女神の笑顔。

「……嬉しい!じゃあ、このまま良い女になるね!!」

「ちょっ……」

無邪気な笑顔で「ん?」と、首を傾げ……俺を見つめる。

何も……言えなくなってしまった。

良い……女??

秋、嫌いじゃないけど……前のほうが……と、言いたいのに。言葉を飲み込む。

ガラスの破片をホウキで集める秋は、背中を向けた。

「浩君、好きよ……」

小さい声で、今……確かに……

「え?何……聴こえない……もう一度言って……」

空耳じゃないよな?

「ん~?別にぃ?……何も、言ってないよ?」

しゃがんで、ガラスを塵取に入れながら答える。

怖くて訊けない……

「そう……か。ごめん……」

「……変な浩君。」

塵取の中のガラスは、燃えないゴミの中に……音を立てながら……落ちる……。




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