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94 ドン、と鈍い音がした

 走り回って到着した最後の防衛ポイントのひとつ。

 型枠が組まれ、コンクリートを練り始めている。


 これでは、、、無理だ、、、間に合わない。


 十数メートル先、土嚢の壁が濡れている。床からは、もはや水が滲み出していた。

 崩壊は時間の問題。

 コンクリートが硬化するまでに、ここは水に浸かる。

 このまま作業を続けていては命に係わる。



「すまないが各現場の責任者に伝えてくれ。今すぐ撤収だ!」


 と言い残して、ハルニナの元へ走った。

 最終決断をすべきだ!

 今すぐに!


 いくつかの角を曲がった。

 どっちだ!

 焦るな!

 落ち着け!




 背後で、ドン、と鈍い音がした。


 えっ!


 振り返ると、廊下の先から水が飛沫を上げて押し寄せてくる。


 いかん!


 どこかで土嚢が決壊したのか!


 ま、まずい!

 逃げねば!



 と、人が!

 押し寄せる水に向かって立っている!


 危ない!


 なぜ、そんなところに!

 なにをしてる!

 逃げるんだ!


 くそ!


 声が届かない!


 ダメだ!

 すまん!



 力の限り走った。



 振り返った。


 ん?


 大丈夫なのか?


 あの水の勢い。

 俺の走力をはるかに上回っていたはず。


 が、水が追ってはこない。


 んん?


 あの人は。



 人が立っていたちょうどそこに、壁ができていた。

 白い壁。


 これは、どういう……。



 声が聞こえてきた。


「ミリッサ殿。早く避難してくだされ。それがしが堰き止めておりまするゆえ」


 この声!


「白龍殿、恩に着る!」

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