表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/312

93 早まった諦めは捨てろ

「ここ、閉じ込められるって心配はないのか?」

「大丈夫。競馬場外にもたくさん出入り口はあるから」

「そこは安心、と。じゃ、俺はまた、土嚢積みに行ってくる」

「ごめんね、ミリッサ。お願いできる?」

「もちろん」

「でね、その前に、ちょっとだけ」

「ん?」

「いつかの時点で、決断しなくちゃいけないと思う。ここから撤収することを」

「うむ」

「それほど、余裕はないと思う。最終のホントのホントの防衛線を決めて、そこに土嚢を集中投下してるんだけど、持ちこたえられないかもしれない。水の力って、すごい」

「だろうな」


「最終防衛線を突破されてからでは遅い。その前に決断して、ここを引き払わなければ」

「とすれば、何が何でも、何十メートルの厚みでも、堤、いや壁だな、を築かねば」


「そうね。でも、見てきて、考えを聞かせてくれる? 持つか、持たなさそうか」

「うーん。まあ、まずは見てくるよ。あ、そうだ。ここでコンクリート打てる資材、ある? できれば超即硬コンクリートとか」

「うん。手配はしてる。でも、間に合わないと思う。職人さんが到着してないので。セメントはあるけど普通セメントだし、それに型枠と砂利が」

「型枠なんて、なんでもいいじゃないか。素人作りでいい。このテーブルぶち壊すとかして。強度のある板だったらなんでもいい。コンクリートも、ミキサーやポンプがなくても。人力で流し込めれば」

「わかった」

「砂利は? 十分ある?」

「妖怪連に依頼してるけど、むつかしいみたい。土ならいくらでもあるけど、砂利は」

「そうか。何か、何か、代用できるものは……」

「思いつかないのよ」

「ま、セメントと土混じりの砂だけでいくしかないか」

「うん」


「土嚢が持ちこたえてる間に、コンクリートの壁を作ろう。それ、今、誰が指揮、執ってる?」

「うん。すぐに呼ぶ。でも、ミリッサに指揮を執ってもらったら」

「それでもいいけど、せっかく頑張ってる人がいるんだから、俺はサポートの方がよくはないか?」

「ん、、、そうね。そうしてくれる?」

「よし。じゃ、どこに壁を作ればいいか、まず見てくる」




 とんでもないことになってきた。

 PHのルアリアンはそれほど多くない。

 かつ、全国に散らばっている。

 それに、知的労働者が多い。

 速攻でコンクリートを、機械も道具もない中、自らの手で打たねばならない。

 しかも、床ではなく、壁を。


 難易度が高すぎる。

 が、やらねばならない。

 今すぐ。


 走りながら、考えた。

 成功のシナリオは、なんだ。

 クリアしなけれないけないことは、何と何だ。



 最終防衛線の廊下は、十か所。

 すでに、かなりの土嚢が天井までびっしりと積み上げられている。

 向こう側に水が来ているのかどうかわからないが、幸い、まだ染み出してきてはいない。

 しかし、いつ何時、水が染み出し、隙間から噴き出し、ドンッと押し流されるかもしれない。

 予断は許されない。


 人々が、土嚢を作ってはその壁を厚くしようと奮闘している。

 危険な状態になったとき、それをどう判断するか。

 かつ、そうなった時点で即、作業を放棄し避難しなければならない。

 天井のある空間。

 水に飲まれたら危険、では済まない。

 水死を覚悟しなければならない。


 そして避難ルートは。

 どこに一時避難。

 そして避難後は。

 そんなことも考えておかねばならない。


 聡明なハルニナ。

 しかも、落ち着いている。

 すでに考慮済みで、各チームのヘッドには伝えてあるだろう。

 だが一応、聞いておかなければ。



 最終防衛線の土嚢ライン。

 その内側の、本当に本当の最終ラインのコンクリート壁。

 無理かもしれない。

 間に合わないかもしれない。


 いかん。

 早まった諦めは捨てろ。

 今、指揮を執っている人の話を聞いてからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ