表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/247

85 久しぶりに聞いた「あいだみち」

「ここから」

 ンラナーラもコアYDに精通しているようで、迷いはない。

 草むらの岩陰、以前ハルニナやメイメイと通った穴からコアYDに入った。


 コアの中枢部に向かって走った。

 走りながら聞いた。


「ンラナーラ。なぜ、ここに?」

「内緒、かな。ミリッサは?」

「ハルニナの救援だ」

「ふうん。でも、ミリッサ」


 言いたいことはわかる。

 PHでもないのに、なぜ?

 ということだ。

 かつては特殊なPHだと言われた。パクチー汁を飲んで、PHの意識を洗い流したのだ。

 が、説明している時間はないし必要もない。

 それより。


「なぜ、スタンドから消えた。どこに行ってたんだ」

「それ、ダメ。ミャー・ランがいい、って言ったら、話す」


 なるほど、ランの指示ということか。


「アイボリーとミカンは?」

「知らないラ」

「そうか……」


 別行動か。

 アイボリーとミカンはPH、ンラナーラは妖怪。


 ということは……?


 考えはまとまらない。

 まあいい。

 今は急ごう。

 ハルニナは今どこにいる。

 まず、地下二階の幹部室が並んでいる通路、そこへ向かおう。



「ンラナーラ。ここでもういいぞ。後はわかる」

「そう?」

「助かった。自分の仕事に戻ってくれ」


 あそこで会ったのだ。

 きっと宇治川の様子など、見に来たのだろう。


「もう、済んだ。あいだみちから、帰る」



 久しぶりに聞いた「あいだみち」

 あの妖怪にも世話になった。

 日本全国を秘密の道で繋いでくれる妖怪たち。

 お礼のお菓子さえ差し出せば、人間だって通してくれる。

 入ったところが梅田の茶屋町で、出たら神戸の御影。

 その程度ならお安い御用。

 妖怪の村にだって、簡単に行くことができる。

 姿は見えねど、妖怪界の移動手段として重要な役割を果たしている。

 そんな妖怪。



「帰ったらランに会うのか?」

「はい」

「じゃ、伝えてくれ。いや、やっぱいいい」


 コアYDの支援を、と一瞬考えたが、それは自分が言うべきことではない。

 必要とあればハルニナがお館様に依頼するだろう。

 いや、もう依頼しているかもしれない。

 現に、ンラナーラはここにいる。



 じゃ、ここで、しばし、お別れ。

 と、ンラナーラは赤い右目をきらめかせて、消えた。


 妖怪。

 目の前のことをすぐにそのまま受け入れる。

 悲壮感といった感情には無縁の存在。


「おう! ランによろしくな」

「あ、いや、それは……」


 声だけが遠ざかっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ