82 本当に帰ってしまっていいのかな……
なぜか、スマホは圏外。
連絡がつかない。
手分けして探した。
見つからない。
パドック!
いない。
いくら何でも、おかしい。
救護室!
走った。
そのころになってようやく、JRAからのアナウンス。
本日の第十二レースは中止いたします。
何をいまさら!
救護室は大混雑。
しかし、ここにも三人の姿はなかった。
パトカーが次々に到着している。
多くの警察官が競馬場内に走りこんできた。
そして再び放送。
競馬場内はただいま、大変混乱いたしております。
お連れ様とはぐれることのないよう、ご注意ください。
なんの意味もないことを!
再び、手分けして、トイレや馬女カフェ、シアタールームや名馬ミュージアムまで探し回った。
端から端まで、スタンドを何往復もした。
大型遊具のある緑の広場や、遊園地ポーハーハー・ワイでも、大声で呼びながら走り回った。
いない。
うむう。
どこに行った……。
残るは、京阪淀駅。
しかし、黙って帰ってしまうような子らか?
あるいはルリイアのマンション。
鍵を持ってないのに?
そういえば、ルリイアはどうしているだろう。
気にはなるが、きっとてんやわんや。
見舞うわけにもいかず、結局は、京阪淀駅に向かおうとした。
当然、ミーティングは中止。
濡れた服のままではいられない。
もはや夕刻。
ここは学生らを早く自宅に戻すのが良策。
あるいは、駅前の商店街でとりあえずの服を買うか。
買って、ルリイアのマンションで着替えさせる、か。
しかし、競馬場からすぐには出られなかった。
京阪電車は全線で運休していた。
人波が駅の改札を先頭に、競馬場内にまで伸びていた。
ゲートに人が押しかけ、ぎっしり。
「出れないかも」
「強引に出るしか」
「でも、本当に帰ってしまっていいのかな……」
「なんで、こんなことに……」
「寒くなってきた……」
無理やりにでも、一旦は、ここを出よう。
学生たちに風邪をひかすわけにはいかない。




