73 いつもこんな感じ?
「これで俺のネタはすべて」
「ミリッサ、なぜそんなこと、いっぱい知ってるんですか!」
「ジン、それ、今、どうでもいいことじゃない?」
と、アイボリー。
「だってさ!」
「いいの。先生は先生なりのすごい人脈、あるんだから」
「あ、ランだな」
「どうでもいいから」
ラン情報ではない。
でも、ルートを明かせないなら、ランだと思ってくれていてもいい。
「しつこいようだけど、無関係情報、の可能性が高い。でも、何かの拍子に、接続する部分があるかもしれない、ってこと」
「ちょ、ちょ、ちょっと、ミリッサ、それって、その、全部、扱うってことですか?」
ジンがまた念押しの質問を投げてくる。
「いいや。ちゃんと聞け。もう一度言う。無関係情報。でも、何かの拍子に、接続する部分があるかも、ってことだ」
「よかった。あ、いや、よかったなんて言っちゃいけなかった」
では、ガリにマイクを回そう。
ジンに、目でサイン。
気づけよ。
次はガリさんだぞ。
ジンの顔がガリを向いた。
「心外よね。私も一部員だって言ってるのに。でも、私の意見。ミリッサ先生と完全に同調します」
ひとつ付け加えることがあるとするなら、イオさんのこと。
よく知ってる。
むしろ親しくしていただいてます。
行方不明、ってこと今聞いて、とても驚いてます。
「鍾乳洞、風穴? 巡礼? よくわかりませんが、なにか、事故?」
「わかりません。今はまだ」
「そうですか。私は、そのたこ焼き居酒屋のおじさんより、むしろイオさんの方が気になってます」
「はい……。でも」
「わかってるわ。扱わない、でいいと思います。でも、聞いていい?」
「はい……」
「風穴で死んでた人、イオさんじゃない、ってことでいい?」
「あ」
違う。
身長が。
死んでいた人はかなり小さい人。
ジンらの顔にもそう書いてある。
とはいえ、断定はできない。
ジンが、その通り、応えた。
「ちがうと思います。でも、分かりません」
「そう……。それで、もう時刻も遅いですし、先走るようですが、その件、守衛さんに私からも聞いてみていいですか? ライトウェイさんとイオさん、仲がいいようですので、なにかご存じかもしれません」
さすが、ガリはよく見ている。
守衛から聞いた話だと明かした。
「あ、そうだったんですね」
「ぜひ、相談に乗ってあげてください」
情報源を明かしてしまったが、ライトウェイは許してくれるだろう。
ガリなら、興味本位の話にはしないはずだ。
もう時刻が遅い、と気づいたメンバーが腰を浮かしかけている。
ジン、そろそろ締めの言葉を。
「じゃ、今日はこれで終了とします。来週は、定例のミーティング後、ここでそのまま今の話の続きをします。その時、具体的にどう進めるか、話し合いたいです。それまでミリッサ先生、一度相談に乗ってください」
木曜の部活、いつも通りするよ!
フウカ先輩、ルリイア大先輩、ハルニナ先輩、スペーシア先輩、そしてメイメイも、今日はありがとうございました!
「ジン、やっぱりあなたには先輩って呼ばれたくないよ。今まで通り、スペーシアって呼んでよ。眠たい話するな、って言って。もしかして、部長だからって、肩に力、入りすぎてない?」
「そうそう!」
「私もそう思う」
フウカが今日一番の笑顔を見せた。
京阪淀駅まで連れだって帰る。
ハルニナが腕を組んできた。
おいおい。
何するんだ。
学生たちはともかく、ガリさんもいるんだぞ。
「前にもいっぺん、腕組んでここ歩いたよね」
忘れもしない。
俺が殺されかけた時だ。
しかし、
「あれはだな、俺が」
「フラフラだったから? ま、いいじゃない」
「いいことあるか。放せ」
ジンがニヤニヤしている。
三年生は目を丸くしている。
フウカは、いや、それより、放せって。
「あ、そだ。みんなで腕組も。ほら初詣の時にしたみたいに」
ジンが率先してハルニナと腕を組んだ。ジンの腕をアイボリーが。
俺の反対の腕を、フウカがおずおずと。
「ほら、あんたたちも。これ、サークルの伝統」
「嘘つけ」
三年生が、五人、みんなで腕を組みあった。
「歩きにくいぞ。それに、道幅いっぱい。迷惑そのもの」
「気にしないの。誰も歩いてないんだし。私たち以外」
「面白いわね、あなたたち。いつもこんな感じ?」
と、ガリはスペーシアと、もう一方の腕をメイメイに回した。




