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67 石の上にバラまかれたコイン

「もう、この辺でいいことない?」

「こういうのって、先があると、どうしても行ってみたくなるよね」

「でも、なんとなく、不安になってきた」

「帰れる?」

「糸とか、入口から伸ばして来てない」

「なにそれ」

「大丈夫」

「先生がいるから?」

「先生もだけど、ランがいるから」

「ラン先輩が? どうして?」

「そりゃ、ランは」


 と、ジンが先頭を行くランを見た。


 そう、あえて言わなくてもいい。

 ランは妖怪だからなど。

 しかも、妖怪界きっての武闘派、七人衆のひとり、トラより巨大な獰猛な黒豹、などと。

 ランが言いたいのなら、自分で言うはずだから。


「山奥育ちだからね」

 と、ジンの後を引き取っておいた。




「そろそろと違うん?」


 入口の案内板には、観音堂なる場所が入口から六十五メートル、と記載があった。


「あ、ここだ」

「ヤタ! 到着!」


 地面から突き出た石の上に、それこそ手の平サイズの祠が祀られてあった。


「お賽銭」

「あげる?」


 石の上にバラまかれたコイン。


「やっぱりしとこ。無事に外に出れるように」

「あんた、それって、無事には出られないかも、ってこと?」

「あ、このお饅頭、お供えかな」

「ふうん。和菓子処ケンケン堂だって」

「狐の毒饅頭、って、趣味悪くね?」

「こっちは、スルメ? 普通、お供えするかな」

「めでたいものだから、あるんじゃない?」

 ほかにも、清酒の小瓶、カステラらしき残骸などが置かれてあった。



「あ、人が」


 たしかに。

 観音堂の右手奥、岩陰に一人。


 懐中電灯に捕らえられたその男。かなり小柄だが、身を固くした。

 ランがいるから、とは思うものの、万一ここで乱闘となれば、この子たちも怪我の一つや二つ、するかもしれない。

 なにしろ足場が悪い。

 学生に怪我をさせるわけにはいかない。

 何か、武器になるものを。

 地面の石を二つ、手にした。

「オマエたち、後ろに」

 と言った時だった。


「ギャーーーーーッ」


 けたたましい叫び声が、洞窟内にこだました。


「ミカン! どうした!」

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