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64 でも行き止まり

「こうなっていたのか」


 ランに連れられて向かったのは、あの二の壷。


 南西の方向から入る構造だ。

 中は、北東の方向に向かって狭い石室がある。奥行数メートル。

 クワッチーサビラが首を吊った門型の木製梁が立ち並ぶ。


 よりによって、ここを調査対象に選ぶとは。

 そういや、ここで自殺者が出たことをランに言ってなかったかも。



「一番奥まで行って」

「はいはい」


 ん?

 これは?


 石室の突き当り、屈んでようやく入れる穴があった。

 鉄柵で塞いであったものを、ランが取り外したようだ。


「かなり先まで続いてるよ。でも行き止まり」

「ふうん」

「ミリッサ、入ってみて」

「えっ」


 入るのか。

 真の闇だ。


「大丈夫。さっき行ってみたから。明かりは」


 ランの手に燭台。と、ろうそく。

 なんとも頼りない。

 もうちょっとこましなものを持って来いよ。


「私も一緒に行くから」


 なぜ?

 とは問わなかった。

 面白がってランは言っているのではない。

 ちゃんとした、かどうかわからないが、理由はあるはず。


 やれやれ、と口に出して腹ばいになった。




 穴は、途中でコンクリートの管になった。

 まるで下水管。

 腹ばいでも進みやすい。


 えっちらおっちら、膝が痛いぞ、数分。

 二十メートル以上は来ただろうか。

 ランが言ったように、行き止まりになった。

 岩の壁。


「ほら、ここ見て」


 なるほど。

 穴の底面。

 岩壁に隙間がある。


「覗いてみて」


 はいはい。

 なんでも、ご指示のとおり。

 土管に寝転んだ。


「何か見える?」

「うーん。ちょっと先まで続いてる。どこかに繋がってるような……」

「うん」

「で?」


 なんだというのか。

 それに、あのいかつい青年紳士妖怪はどこに行った?


「さ、バックしよ」


 腹ばいで、バックバック。

 慣れない動きで、なかなか骨が折れる。

 明日、全身筋肉痛を覚悟だ。

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