57 上滑りなアドバイス
エヌケイビーはニコニコしっぱなしだ。
高校時代の思い出話を嬉々として繰り出してくる。
それに対して、ヤタブーもココミクも、どこか、上の空。
というか、無理に作った笑み。
そういや、前に会った時も、エヌケイビーのことは一切出なかった。
仲が良くないのか。
それにしてもココミクよ。
どうした。
話してくれないのか?
「ココミク?」
「先生、えっと」
ようやく話し出したココミク。
「本質、これが大事。そうアドバイスをいただきました」
私もその通りだと思います。
この土地の力を増幅。
観光客の側から見た魅力、ではなく。
確かにそう言った。
その思い付きがこの娘を悩ませているのかもしれない。
ひとつ、助け舟。
これも思い付きレベルだが。
「経営的にどうするか、ということとは別問題だよ。そういう見方もあると思うよってこと。でも、戦略を絞り込むとき、枝葉がたくさんあっても、枝葉は枝葉。惑わされちゃいけない」
「ええ、デザインの授業でもよくそうおっしゃってました。最も表現したいことは何か、そこを見失うなって」
ココミクはなかなか本題に入っていかない。
課題を明示してくれないことには、アドバイスも上滑りなものになってしまう。
先日の快活さはどこへやら。
やはり、父や母を前にしては話しにくいのか。
かといって、こちらから想像の課題を列挙してみるわけにもいかない。
なにも知らないのに、想像を膨らませただけの無責任な話で済ませることではない。
まだ、ランとの待ち合わせには十分すぎる時間がある。
このまま、ここであいまいな話をし続けるのは得策だろうか。
エヌケイビーもヤタブーも、今は娘の話に耳を傾けてはいる。
しかし、何時間もこうはしていられない。
日を改めた方がいいのかも。
何とか、うまく引き上げることはできないか。
そう思い始めた時だった。
ラッキーにもポケットのスマホが鳴った。
ジンだった。
ミリッサ。
あれでよかったかな。
うん。
ブルータグの頼みのこと。
と、ここまで聞いて、後で架けなおすよ。
ここを辞す格好の理由ができた。




