表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/253

56 課題が何なのか、聞きに来ただけ

 ココミクの実家にいた。


「すみません。急に押しかけてきて」

「いいえ! 来てくださって、ありがとうございます!」


 ココミクの頼みがそのままになっている。

 ペンタゴンを何とかしなくてはいけない段階に来ている。相談に乗ってほしい。

 という、あまり興味のない課題。

 急遽、連絡を入れて、なかば無理やり、今日、行くよ、と言ったのだった。

 幸いかどうかわからないが、エヌケイビーとヤタブーも同席している。


 もちろん、ランとの約束のついで。

 面倒ごとは、チョンチョンと、一気に済ましておくに限る。

 ランとの約束は、午後九時。

 それまでにペンタゴンに入っておく、と手筈は決めてある。



「ココミク、じゃ早速、話の続き、聞こうか」

「あ、いえ。その前に、お食事を」

「え、あ、すみません。お食事時に押しかけてきて」

「いいじゃないか。気にするな。メシ、食べながら話そう」

 とエヌケイビーが、ビールを出してこようとする。

「すまん。メシは済ませてきた」


 まだ五時過ぎ。

 食事をしてきたには早すぎるが、とっさの嘘。

 食事時の微妙な時刻にならないよう、ランと別れてからスッ飛んできたのだ。


「ま、いいじゃないか。来るってんで俺も慌てて帰ってきたんだ」

 

 さっ、とココミクが父親の顔を見た。

 ふむ。

 どうも、実際は違うんだな。


「いやいや、どちらにしろ食事は遠慮するよ」

「そうかぁ。じゃ、ま、ビールとつまみだけでも」

「すまん」



 エヌケイビーが、場を仕切ろうとする。

 家長として、それでいいのかもしれないが、少し気になってきた。

 家族経営と聞いている。

 つまり、家族共通の課題だと思っていたが、早とちりかもしれない。

 ココミクの表情が固い。

 しかし、もう後には引けない。

 二人きりで話したいとはココミクも言っていなかったわけだし。

 

「娘が世話になった。いろいろ、大学では。改めてお礼を言うよ」

「なんの」

「競馬サークル。そこでも世話になったそうじゃないか」

「いや、娘さんの熱意に押されただけのこと」

「ハハ。熱意か。それ、僕にも言えるんだよな。すっかり嵌っちまった」

「ほう! そうか。京都競馬場にも行くのか?」

「ああ、土日は毎週行くぞ」

「ハハ。あんまり金、つぎ込むなよ。遊びなんだから」

「まあな」


 途端にエヌケイビーの目が泳いだ。

 いかんな。

 ギャンブルとして競馬を見ているな、こいつ。


 エヌケイビーはすぐさま、話を変えてきた。

「それに、娘から相談に乗ってほしいと言い出したそうだな。わざわざ来てくれて、頭が下がるよ。ありがとう」

「いや、まだ何もしてないさ。とりあえず、その課題が何なのか、聞きに来ただけ」


 改めてココミクの顔を見た。

 さあ、話してくれ。

 君の思うことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ