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55 今日の晩、空いてないかな

「ミリッサ、なんか、ボーとしてるね」

「いや、頭がついていかん。びっくりすることばかり」


 へへ。

 前もそんなこと、言ってたよね。

 本当はちょっとしか驚いてないのに。


 じゃ、話を戻すね。

 いつまでもここでデートしてるわけにいかないし。


「お、これはデートだったんだ」

「デートじゃなきゃ、なんなん?」

「俺はてっきり」

「てっきり?」

「ん」

 なんでもない。

 思いつかない。


「で、話を」

「じゃ、端折って言うね」



 今夜連れて行くのは、草。

 でも、元、人じゃない。

 彼らは私の指示やお願いくらいでは動かない。

 なんていうのかなー。

 プライド、高すぎるねん。



「じゃ、ティラノザウルス、とか」


 キャハハ!

 ミリッサもだんだん、頭柔らかくなってきたね!

 うれし!


 でも、ちがう。

 あの連中は、妖になった者も含めて、六千六百万年前の巨大隕石の衝突によって、すべて滅んじゃった。


「じゃ、マンモス」


 フフ。

 もういいって。

 普通に、猿、人? んっと、猿人、というのかな。

 普通の人類より、かなり年寄り。

 その人から見たら、あのショウジョウなんて、まだ生まれる前の胎児みたいなもん。

 どれだけ年齢を重ねているか、想像もできないくらいに長生きの妖。


「よく、そんな人がランの頼みをきいて、ついて来てくれるんだな」


 まあね。

 これでも私、いろいろ人助け、してるから。そのお礼。


「でさぁ」


 と、ランは立ち上がり、テーブルを回りこんでくる。

 そして、隣に座ると、胸のお守りを点検し始めた。


「ミリッサ、今日の晩、空いてないかな」


 えええええっ!


「空いてない?」


 ランはともかく、そんなたいそうなお方に会うのは、御免こうむる。

 俺を巻き込むな!

 

「その人、一般的にケンジンって呼ばれる人たちなんやけど、そのうちの一人がさ、ミリッサのこと話したら、会ってみたいって」


 な!

 おいおいおい!

 なんでそうなる!


「ダメかなぁ」


 じゃ!

 行く!

 行かせていただく!

 参上仕ります!

 そのかわり!

 交換条件だ!


 フウカの上司にサリって女がいる!

 行方不明!

 調べろ!

 そいつのこと!

 生きてるか死んでるか! どこにいるか!

 サイバー隊でも、ショウジョウでも、なんでも使え!


「どさくさ紛れに頼まれちゃったー」

「そっくりそのまま返す!」

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