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54 ご高説、もう、いいから

「ということは、でかいのがマカミってやつで、小さいのがラン」

「うん、そうそうそう」

「仲は良くないけど、一緒に行動」

「お館様の言いつけやからね。主導権は私にあるけど」


 でもさぁ。

 連れて行くのにあいつが適任って思ったんやけど、ダメやったみたい。

 あいつはさ、力も度胸もあるねんけど、妖力って意味だと、あまりないみたい。

 自分では、強いって思ってて、俺が一緒に行くって言い出したんやけど。


 それでね。

 今夜は腕力は弱いけど、妖力だけはめっぽう持ってる人を連れていく。


「へえ。だれ?」


 ミリッサは会ったことないはずだけど。

 これ、言ってしまっていいのかな。


「言え」


 なにそのエラそうな言い方。

 えっとね。


 人。


「えっ」


 人。

 PH。


「まさか、ハルニナ!」


 キャハハハハハ!

 なにそれ!

 ハルニナ!

 妖と違うやん!!

 キャハハハハハ!


 ミリッサ。

 よーく、考えて。

 ほら。

 わかった?


「うう、わからん」


 わからん、か。

 ハルニナが言ったこと、思い出すわー。

 私が言ったことも、思い出すわー。

 自分の殻に閉じこもって、何も知ろうとしない人。

 なにもわかっちゃいない人。


「悪かったな! 十分反省してるって。でも、変えようがないものは変えられん」


 違うよ。それ。

 変えようとしてないだけ。


「ご高説、もう、いいから」



 つまりさ。

 太古の昔から、進化、あるいは変遷を重ねて人という存在がこの世に生まれてきたやんか。

 その時、PHも同じように、並行して、生まれてきたやんか。

 人間が好む分類風に言えば、人類の一類型として。

 死んでも意識がすぐには消えない種類の人が。


 その人たちって、ハルニナはどう説明した?

 きっと、こう言ったんとちがう?

 他に乗り移るのに疲れて、自ら命を絶った、とか。

 でもさ、それって、本当?

 全部がそう?

 違うん違う?

 むしろ、そういう人の方が少ないんと違う?


 もう、わかった?


「うっ、わからん」


 魑魅魍魎とか、言わんといてや。

 そんなのは想像上のもんやから。


 意識が消えることはない。

 あるいは、消えたくない。

 となれば、何かにとり憑いてればいい。

 相手が人じゃなくてもいいわけやん。


 草でも木でも、石でも。

 建物でも、橋でも、船でも。


「なるほど!」

「ね!」


「そういえば、前に、私の草を使った、と言ってたな」


 うん。

 一言で「草」って言っても、獣、とは限らないねん。

 元は人、PH、ってこともあるわけ。


 どう?

 これで完全にわかったかな。


「なんとも……」



 そんな世界があったとは。

 世の中、知らないことだらけ。


 妖怪が実際に目の前にいて一緒に食事し、死なない意識を持つPHが普通に大学で学んでいて、というだけでも驚くばかりなのに、妖怪になった人間がわんさかいるとは。

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