49 胸に刺さった話
「十日ほど前、ミリッサ先生とヨウドウ先生とアイボリーとで、大阪市内のパワースポットに行ったんだ。その時のこと、話すね」
ごくあっさりとジンは説明していく。
それがどうしたという顔をしていたメンバーも、首吊り自殺の段になって、俄然神妙な顔になった。
「でさ、ブルータグが言うんだよ。その死んだ人、好きだったんだって」
「違います!」
「ごめんごめん。みんなの顔、深刻だったから、ちょっとボケかまそうかなって」
「なんでやねん!」
「ブルーとピンク、バイト先の店長。好きだったんだって」
「ち・が・い・ます!」
「実はその店、ミリッサ先生も常連で」
「常連さんと言うほどでは……」
「へえ! ブルーとピンク、先生を連れて行ったんだ。それって、抜け駆け?」
と、ここでスズカ参戦。
「え、ということはあんたもミリッサ先生を、ってこと?」
「あ、そうとるかー」
「だいたい、それって、サークル入る前だもんね」
「ますます、怪しい。それがサークル入った理由だったりして」
「うへ! 失礼すぎ」
オマエたち、いったい、何の話をしてるんだ。
ガリの顔を横目で見た。
笑っている。
ま、いっか。
「ちょっと、あんたたち、ボクの話、聞いてくれる?」
と、ジンが巻き戻した。
ボクはさ。
格好つけるわけじゃないよ。
サークルメンバーのブルータグから相談受けて、ふうん、って済ましたくないんだ。
力になれるとは、全然思えない。
でも、だからって、悲しんでる、困ってる人を、見て見ぬふりはしたくないんだ。
フウカ部長がそうだったようにね。
去年、ある日さ、ミリッサが言ったんだ。
互いに尊重し、信頼し合えないなら、一緒にいても、仲間だと言えるはずもない。
たとえ、こんな小さなサークルであっても。
って。
「正直言うと、ボク、胸に刺さったんだよ」
ああ、そんな大げさなことを言ったな。
よく覚えている。
あれは、ミーティングの場でとっさに出たこと。
そう、まさにこの部屋で。
後になって、少々気恥ずかしかった。
でも、ジンが、あの言葉そっくり覚えてくれていたとは。
目の隅のガリが、へえ! という顔をしていた。




